大不漁必至の秋の味覚・サンマ:くちばし黄色く、背中モッコリを探そう!

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近年の不漁続きで、高値が続いているサンマ。消費者としては、漁の現状や市場の動向を踏まえた上で、少しでもおいしく旬の魚を味わいたいもの。プロの目利きに新鮮なサンマの見分け方も聞いた。

秋の味覚・サンマが、極端な不漁に見舞われている。出漁しても、なかなかポイントが見つからず、魚群はまばら。水揚げが少ないために値段が高騰し、食卓からますます遠ざかっている。これから秋が深まっても、以前のように脂が乗ったサンマを手軽に食べられそうにない。季節を代表する魚だけに、今後少しでも漁獲が上向くことを漁業者や流通関係者は期待している。

冷凍物の方が安くておいしい!?

今年のサンマ漁は、小型船の漁が7月上旬に解禁され、中旬にわずかに出回った初物には、東京・豊洲市場(江東区)で1キロ当たり10万円、1匹1万2500円という超高値を付けて話題となった。

東京の魚市場では過去最高値となる1キロ 10万円を付けた初サンマ(7月16日)時事
東京の魚市場では過去最高値となる1キロ 10万円を付けた初サンマ(7月16日)時事

このサンマの大半は台湾の高級すし店が購入し、一部が銀座などのすし店に出回ったという。超高値スタートから9月上旬になり、東京都内のスーパー店頭では「新サンマ」は1匹350円ほどで販売されていた。残暑厳しい中、季節の移り変わりを物語る旬の魚だが、値段の割にはほっそりしていて、少々頼りない魚体。一見、カマスかサヨリと見間違うほどのスリムなボディーだ。

ところが、新サンマの近くには「これだ!」と思うようなひと回り大きな「サンマ」も並ぶ。こちらは1匹180円で新サンマの半値。「何これ?」と思った人もいただろうが、こちらは「取れたて」ではなく、昨年に冷凍保存したストック品。解凍され、新サンマの近くで幅を利かせていた。

水産物の仕入れを担当するこのスーパーのバイヤーに聞くと「新物にはそれなりの需要があるが、今年は冷凍物の方が断然おいしい。生(新物)は身が細いし脂も薄いが、冷凍物の方は脂が乗っていて、好きな人はほろ苦い腹わただって味わえる」と教えてくれた。

魚体が細く脂の乗りもいまひとつの今年の生サンマ 写真:筆者提供
魚体が細く脂の乗りもいまひとつの今年の生サンマ 写真:筆者提供

不漁続きで冷凍在庫も少ない

シーズン中、生のまま流通するサンマのほかに、冷凍保存に回される分もある。そのおかげで季節に関係なく、街の定食屋などでは1年中、サンマの塩焼きが食べられ、一部は開きや缶詰の原料にもなっている。

今年のような不漁時には、生サンマの仕入れが困難なことから、スーパーなどでは前年にストックしたサンマが販売されることが少なくない。冷凍物があれば、不漁でも常に食べ続けられそうだが、「塩焼きにして食べるような大きめのサイズで、身質が良いサンマは少なくなっている」と、豊洲市場でサンマを扱う卸会社の競り人は言う。

農林水産省がまとめた全国主要冷蔵庫の冷凍サンマ在庫量は、今年7月末で約7000トンと前年同期の半分以下。昨年の不漁でも冷凍物が大活躍しただけに、在庫量としては厳しい。中でも「生に引けをとらないほどきれいな銀色をしていて、大きめのサイズは人気があって残り少ない」(流通関係者)という状況だ。

冷凍在庫も品薄のため、シーズン後半の漁獲に期待したいところだが、本格的な漁期入り前の7月末に水産庁が発表した予想では、過去70年で最も少なかった19年をさらに下回る見通しだ。沿岸にあまり漁場は形成されず、魚体も小ぶりと悪材料だらけ。全国さんま棒受網漁業協同組合(東京)によると、8月1カ月の水揚げ量は200トンに満たず、18年8月の9000トンのわずか2%強。不漁と言われた19年8月の1000トンの5分の1以下だ。9月以降も回復の兆しはない。

塩焼きに向いた大ぶりのサンマは、冷凍品も品薄状態 pixta
塩焼きに向いた大ぶりのサンマは、冷凍品も品薄状態 PIXTA

新鮮でおいしいサンマの見分け方

緊急事態宣言が解除された後も、感染リスクを警戒して外出・外食を控え、自宅で食事する機会が増えている。不漁で高値になっているとは言え、脂の乗った旬のサンマを塩焼きで味わうささやかなぜいたくを楽しみたいもの。サンマ漁関係者によると、依然として水揚げは少ないものの、9月に入ってふっくらとしたサンマも取れるようになっているという。

「新鮮なサンマは下のくちばしが黄色い」と豊洲のベテラン仲卸は言う。さらに魚体の銀色がキラキラしていれば申し分がないそうだ。鮮度が落ちてくると、くちばしの黄色が目立たなくなり、光沢も消え、目が充血したように赤くなる。また、市場関係者は「背中がモッコリ膨れているものは、絶対にうまい」と口をそろえる。脂が乗って魚体に厚みがあり、食べ応えが違うそうだ。

脂の乗りを物語る頭の後ろ・背中の部分がモッコリのサンマ(旧築地市場) 写真:筆者提供
脂の乗りを物語る頭の後ろ・背中の部分がモッコリのサンマ(旧築地市場) 写真:筆者提供

10月下旬以降にいちるの望み託す

太平洋で近年、漁獲好調なイワシに対して、サンマは不漁期に入ったと言われる。海水温の上昇など海洋環境の変化や、春先の外国漁船による公海での「先取り」が問題視されているが、はっきりした理由は分からない。

今シーズンは取りあえず、マイナス要素ばかりが目立つが、水産庁は「10月下旬以降、三陸沿岸に漁場が形成されるようになれば、漁獲も今よりは上向くのではないか」とみている。秋・冬の魚介ではサケやイカ、戻りカツオなどの水揚げも振るわないだけに、各地の漁港や豊洲市場をはじめとした都市部の魚市場では「少しでもサンマ漁が上向いてくれないものか」と切なる願いを込めた声が多い。

2018年の「目黒のさんま祭り」。今年はコロナの影響で中止になったが、来年はコロナ収束とサンマの大漁でにぎわってほしい PIXTA
2018年の「目黒のさんま祭り」。今年はコロナの影響で中止になったが、来年はコロナ収束とサンマの大漁でにぎわってほしい PIXTA

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