『キャプテン翼』ゆかりの街・葛飾区四つ木を歩く  「あの場面」追体験できるラッピング駅 キャラ銅像訪ねる散策ルート

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今年4月、43年にわたる雑誌連載を終えた『キャプテン翼』。サッカー漫画の金字塔とされる作品の原作者、高橋陽一さんの出身地・東京都葛飾区四つ木周辺は、作品の登場人物や名場面の装飾でラッピングされた京成電鉄・四ツ木駅や、キャラクター銅像がある公園など、漫画やアニメを追体験できるスポットが多い。街を歩いてみた。

ホームに降りると翼ワールド

東京スカイツリーに近い押上駅から京成押上線で約5分。四ツ木駅のホームに降りると、主人公の大空翼のオーバーヘッドキックなど、壁に描かれた名場面が目に入る。列車の接近を知らせるメロディーは、アニメでおなじみのテーマ曲「燃えてヒーロー」。案内のアナウンスは大空翼と日向小次郎の声優が担う。漫画・アニメの世界に紛れ込むような感覚になる。

京成電鉄四ツ木駅ホーム。電車を降りると、大空翼たちが出迎えてくれるⓒ高橋陽一/集英社・キャプテン翼シーズン2 ジュニアユース編製作委員会
京成電鉄四ツ木駅ホーム。電車を降りると、大空翼たちが出迎えてくれるⓒ高橋陽一/集英社・キャプテン翼シーズン2 ジュニアユース編製作委員会

ホームからコンコースへと降りる4カ所の階段は、壁にキャラクターたちがちりばめられ、英語、中国語、スペイン語、ハングルなど多言語で歓迎の言葉が記されている。

タイから訪れた『キャプテン翼』ファンの男性は「連載が終わってしまったのは残念だが、漫画もアニメも大好きで、この場所に来られて興奮している」と、記念撮影をしていた。

四ツ木駅ホーム階段。通勤通学客が少ない時間帯には、記念撮影する外国人もⓒ高橋陽一/集英社・キャプテン翼シーズン2 ジュニアユース編製作委員会
四ツ木駅ホーム階段。通勤通学客が少ない時間帯には、記念撮影する外国人もⓒ高橋陽一/集英社・キャプテン翼シーズン2 ジュニアユース編製作委員会

デザイン一新  海外ライバルも

葛飾区四つ木は原作者の高橋さんの出身地。主人公の大空翼が小・中学校時代を過ごした街として描かれる静岡県の「南葛市」は、高橋さんの出身高校である都立南葛飾高校の略称から名付けられている。

四ツ木駅のラッピング装飾は、京成電鉄が地元葛飾区や出版社の集英社などと協力して2019年にスタート。昨年11月には新作アニメ『キャプテン翼 ジュニアユース編』のテレビ放映にあわせ、デザインをリニューアルした。大空翼率いる日本代表のキャラクターに加え、ドイツやアルゼンチンなどの個性あふれる海外ライバルたちが登場した。名場面数のパネルも大幅に増えた。

作品は、1981年に漫画雑誌「週刊少年ジャンプ」で連載開始。サッカー少年の大空翼が、全国のライバルたちと切磋琢磨(せっさたくま)しながら、成長していく姿を描いた。個性豊かなキャラクターが繰り出す迫力のある技も見どころで、アニメ版も含め世界中でブームになった。多くの言語に訳され、全世界の累計発行数は9000万部超。日本をはじめ、各国代表クラスのスター選手が少年・少女時代に愛読していたことも知られる。

四ツ木駅構内では、新型コロナウイルスの影響が収まり海外からの訪日客の姿が増えている。人気観光地の浅草や東京スカイツリー、成田空港や羽田空港などへのアクセスが良く、外国人が立ち寄りやすい場所であることも影響しているようだ。四ツ木駅の丸高進駅長は『キャプテン翼』にちなんだ駅づくりについて「海外客が駅を観光の目的地に選んでくれるようになっている。これからも地元の皆さんと一緒に『キャプテン翼』の駅を盛り上げていきたい」と話す。

階段アート、天井にはツインシュート

四ツ木駅構内は、床、天井、トイレまで『キャプテン翼』で埋め尽くされている。

1階のコンコースから階段を見上げると、縦面の蹴込(けこみ)を利用した「階段アート」を楽しめる。巨大なキャラクターが大迫力でポーズを取り、「STOP駆け込み乗車」などと、駅のマナーを訴える。

四ツ木駅の階段。両側には登場人物が所狭しと描かれているⓒ高橋陽一/集英社・キャプテン翼シーズン2ジュニアユース編製作委員会
四ツ木駅の階段。両側には登場人物が所狭しと描かれているⓒ高橋陽一/集英社・キャプテン翼シーズン2ジュニアユース編製作委員会

コンコースの床は芝や白線が描かれ、サッカースタジアム風。天井を見上げると、大空翼と岬太郎が2人同時にボールを蹴る必殺技「ツインシュート」を眺められる。改札の外側の天井は、大空翼がオーバーヘッドキックを決めるシーンだ。トイレ入り口はゴールポストが描かれている。構内アナウンスには、翼の「応援団」を担う女子キャラ、中沢早苗の声も登場する。

四ツ木駅コンコースはスタジアムのフィールドのようなデザイン。天井を見上げると、必殺技「ツインシュート」に圧倒されるⓒ高橋陽一/集英社・キャプテン翼シーズン2ジュニアユース編製作委員会
四ツ木駅コンコースはスタジアムのフィールドのようなデザイン。天井を見上げると、必殺技「ツインシュート」に圧倒されるⓒ高橋陽一/集英社・キャプテン翼シーズン2ジュニアユース編製作委員会

改札は、サッカースタジアムの入り口のような雰囲気だⓒ高橋陽一/集英社・キャプテン翼シーズン2 ジュニアユース編製作委員会
改札は、サッカースタジアムの入り口のような雰囲気だⓒ高橋陽一/集英社・キャプテン翼シーズン2 ジュニアユース編製作委員会

駅の一角には、原作の高橋さん、作品のファンとして知られる元スペイン代表のアンドレス・イニエスタ選手、元日本代表で地元社会人チーム・南葛SC所属の稲本潤一選手、女子サッカーの元日本代表・澤穂希さんのサインも展示している。

元スペイン代表のイニエスタ選手らのサインも展示されているⓒ高橋陽一/集英社・キャプテン翼シーズン2 ジュニアユース編製作委員会
元スペイン代表のイニエスタ選手らのサインも展示されているⓒ高橋陽一/集英社・キャプテン翼シーズン2 ジュニアユース編製作委員会

四ツ木駅には『キャプテン翼』マニアもいる。40代の男性駅員は、幼少期から漫画を愛読していたといい、「外国からのお客さんにキャラクターのエピソードを説明することができ、幸せです」と語る。

街に銅像、スタンプラリー

葛飾区は『キャプテン翼』にちなんだ地域づくりを2012年度からスタート。四つ木地区に隣接する立石地区も含め、公園などにキャラクター銅像を計9体設置した。散策コースも設定し、日本語版、英語版の地図を無料配布している。区によると今年に入ってから英語版の地図の配布が好調という。 米国から友人と四ツ木を訪れたアニメファンのノエ・ゴメスさん(38)は「小さい頃から翼のアニメが好きだった。アニメが生まれた街を楽しんでいる」と話していた。

葛飾区の四ツ木公園で、キャプテン翼のライバル・日向小次郎の銅像と記念撮影するノエ・ゴメスさん(後列中央)ら米国からのファンⓒ高橋陽一/集英社
葛飾区の四ツ木公園で、キャプテン翼のライバル・日向小次郎の銅像と記念撮影するノエ・ゴメスさん(後列中央)ら米国からのファンⓒ高橋陽一/集英社

都立南葛飾高校の正門前に設置された大空翼の銅像。翼の隣、岬太郎の立ち位置でボールに足を添えるとツインシュートの記念撮影ができるⓒ高橋陽一/集英社
都立南葛飾高校の正門前に設置された大空翼の銅像。翼の隣、岬太郎の立ち位置でボールに足を添えるとツインシュートの記念撮影ができるⓒ高橋陽一/集英社

葛飾区が作成した『キャプテン翼』の銅像巡りマップⓒ高橋陽一/集英社
葛飾区が作成した『キャプテン翼』の銅像巡りマップⓒ高橋陽一/集英社

葛飾区はサッカー振興と連動した地域づくりにも力を入れている。『キャプテン翼』とゆかりのある全国各地のチームを招待する大会「キャプテン翼CUPかつしか」を毎年1月に実施。作品の中で大空翼が所属したチームと同じ名前の社会人チーム「南葛SC」と協力し、銅像や飲食店、スポーツ用品店など関係するスポットをめぐるデジタルスタンプラリーを昨秋、初めて実施した。葛飾区観光課の担当者は「スタンプラリーに約2400人が参加した。今年の秋には外国人も参加しやすい形式での実施を検討しており、さらに盛り上げたい」と語る。

雑誌連載の最終話が掲載された「キャプテン翼マガジン」(手前)と、漫画の単行本(奥3冊) ⓒ高橋陽一/集英社
雑誌連載の最終話が掲載された「キャプテン翼マガジン」(手前)と、漫画の単行本(奥3冊) ⓒ高橋陽一/集英社

雑誌連載終了  続きはウェブで

作品の雑誌連載は2024年4月4日発売の「キャプテン翼マガジンvol.20」で終了。原作の高橋さんは雑誌に寄せた文章で「漫画家は引退しますが、絵を描くこと、ストーリーを考えることはまだ好きなことなので、それらはこれからも続けていきます」とコメントした。ウェブサイト「キャプテン翼WORLD」では、鉛筆描きのネーム形式で物語の続きが発表されている。

京成電鉄四ツ木駅

  • 住所:東京都葛飾区四つ木1-1-1
  • アクセス:浅草駅から都営地下鉄浅草線・京成電鉄押上線直通 約9分
  • 駅入場券:大人150円、小学生80円、未就学児無料
  • 入場可能時間:電車の始発~終電(平日 午前4時30分~翌日午前0時45分ごろ)

写真:松本創一

バナー写真:京成電鉄四ツ木駅の正面入り口。壁面にはサッカースタジアムの中で活躍する『キャプテン翼』のキャラクターたちが大きく描かれているⓒ高橋陽一/集英社・キャプテン翼シーズン2 ジュニアユース編製作委員会

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