羽生結弦さんの故郷・仙台で聖地巡礼:金メダリストを育んだ日本フィギュアスケート発祥の地

スポーツ

アイスフィギュアスケートでオリンピック2連覇の偉業を成し遂げた羽生結弦さん。出身地・仙台市には、ゆかりの名所やモニュメントを効率よく観光するモデルコースがあり、国内外の熱狂的ファンが巡礼に訪れている。

観光アンバサダーとして“仙台の顔”を務める

2014年ソチ、18年平昌と冬季五輪2大会連続で、男子シングルの金メダルを獲得したフィギュアスケーター・羽生結弦さん。圧倒的な表現力、華麗なジャンプに加え、漫画の世界から抜け出した王子様のようなルックスで世界中を魅了した。22年にプロ転向し、国内での活動がメインとなった今でも、アジア圏を中心に多くの海外ファンに愛されている。

右足の負傷を抱えながら、圧巻の演技で連覇を決めた平昌五輪のフリー(時事)
右足の負傷を抱えながら、圧巻の演技で連覇を決めた平昌五輪のフリー(時事)

生まれ育った杜(もり)の都・仙台では、羽生さんのポスターや映像をあちこちで目にする。ソチ大会終了後、市の観光アンバサダーに就任以来、“仙台の顔”を務め続けているのだ。ファンからの「ゆかりの地を巡りたい」という声に応えるため、市では観光モデルコースを設定。ショーを観覧するために仙台を訪れた人はもちろん、訪日した機会に「足跡をたどり、“ゆづ”を肌で感じたい」という海外ファンが聖地巡礼を楽しんでいる。

旅の起点となるのは、東北新幹線とJR在来線に加え、仙台市地下鉄、観光循環バス・るーぷる仙台などが利用できる仙台駅。構内3階の「仙台市観光情報センター」では、英語版を含めて最新の観光マップが入手でき、多言語に対応したタブレットもあるので立ち寄ると便利だ。

東北新幹線で東京駅から最短1時間半程度のJR仙台駅(撮影:ニッポンドットコム編集部)
東北新幹線で東京駅から最短1時間半程度のJR仙台駅(撮影:ニッポンドットコム編集部)

国際センター駅「フィギュアスケートモニュメント」:半日コース

絶対に見逃せないのが仙台駅から地下鉄東西線で約5分、国際センター駅前の広場にある「フィギュアスケートモニュメント」。2006年トリノ五輪で日本フィギュア史上初の金メダリストとなった荒川静香さんと共に、羽生さんのガラス製記念碑が飾られている。

駅の目の前に並ぶフィギュアスケートモニュメント(撮影:ニッポンドットコム編集部)
駅の目の前に並ぶフィギュアスケートモニュメント(撮影:ニッポンドットコム編集部)

除幕式が開かれた2017年4月、荒川さん(右)と一緒に笑顔を見せる羽生さん(時事)
除幕式が開かれた2017年4月、荒川さん(右)と一緒に笑顔を見せる羽生さん(時事)

荒川さんの代名詞といえる技・イナバウアーのモニュメント横に、2度金メダルを獲得した羽生さんはソチのショートプログラム「パリの散歩道」、平昌でのフリー「SEIMEI」の決めポーズが並ぶ。取材時には同じポーズで記念撮影し、案内板にある手形に自分の手のひらを重ねるファンの姿を見かけた。

五輪2連覇をたたえて2019年、SEIMEIの記念碑(右)も追加された(撮影:ニッポンドットコム編集部)
五輪2連覇をたたえて2019年、SEIMEIの記念碑(右)も追加された(撮影:ニッポンドットコム編集部)

手を重ねるファンが多いのか、少しかすれてしまった2人の手形(撮影:ニッポンドットコム編集部)
手を重ねるファンが多いのか、少しかすれてしまった2人の手形(撮影:ニッポンドットコム編集部)

日本フィギュアスケート発祥の地「五色沼」:半日コース

国際センター駅前にモニュメントが設置されたのは、日本のフィギュアスケート発祥の地として知られる「五色沼」の最寄り駅だからだ。駅から南へ5分ほど歩けば、かつて仙台城・三の丸の堀だった五色沼にたどり着く。

仙台城跡までは徒歩15分ほどの五色沼。ペアの演技をモチーフにしたオブジェが目印(撮影:ニッポンドットコム編集部)
仙台城跡までは徒歩15分ほどの五色沼。ペアの演技をモチーフにしたオブジェが目印(撮影:ニッポンドットコム編集部)

この小さな堀で明治中期、冬になると在留外国人がスケートを滑り始めたという。1909(明治42)年頃から旧制第二高等学校(東北大学教養部の前身)の学生が、ドイツ語教師にフィギュアスケートの指導を受けた。卒業生たちが、その技を全国各地に伝えたことが普及する契機になったとされる。

案内板のモノクロ写真は、フィギュアスケートの練習をする大正時代の第二高等学校生(撮影:ニッポンドットコム編集部)
案内板のモノクロ写真は、フィギュアスケートの練習をする大正時代の第二高等学校生(撮影:ニッポンドットコム編集部)

温暖化の影響などで今では薄氷しか張らず、スケートはできないという(撮影:ニッポンドットコム編集部)
温暖化の影響などで今では薄氷しか張らず、スケートはできないという(撮影:ニッポンドットコム編集部)

国宝の拝殿と直筆の絵馬を拝む「大崎八幡宮」:半日コース

るーぷる仙台に乗り、次に向かうのは初代仙台藩主・伊達政宗が造営した「大崎八幡宮」で、ここまでが半日コースとして設定されている。1607(慶長12)年に完成した社殿は、豪華絢爛(けんらん)な桃山建築で国宝の指定を受ける。厄よけ・除災招福に加え、必勝や安産の神としても知られるので、拝殿で手を合わそう。

そして羽生ファンなら一度は拝みたいのが、社殿の東側にある祭儀棟の陳列棚。平昌五輪を控えた2017年、羽生さんが必勝祈願に奉納した直筆の絵馬が展示されている。内部は撮影禁止なので、他の参拝者の邪魔にならないよう、速やかに鑑賞しよう。

桃山建築の傑作で、国宝の指定を受ける大崎八幡宮の社殿(© Sentia)
桃山建築の傑作で、国宝の指定を受ける大崎八幡宮の社殿(© Sentia)

「裸参り」として全国的に有名な大崎八幡宮の「どんと祭(松焚祭=まつたきまつり)」(© Sentia)
「裸参り」として全国的に有名な大崎八幡宮の「どんと祭(松焚祭=まつたきまつり)」(© Sentia)

12月のライトアップが人気の「定禅寺通」:1日コース

ここからは地下鉄南北線などを利用し、市街地の北側・泉エリアまで足を延ばす1日コースのスポットを紹介する。

まずは、勾当台公園(こうとうだいこうえん)駅から西に向かって美しいケヤキ並木がのびる「定禅寺通」。羽生さんは地元誌のインタビューで、12月開催のライトアップ「SENDAI光のページェント」時に訪れるのが「特におすすめ」と語ったという。東北最大の繁華街・国分町を横切る道なので、順路を変更して夕食前後に訪れるのも手だ。

定禅寺通りは彫刻も必見。中央はエミリオ・グレコの「夏の思い出」(撮影:ニッポンドットコム編集部)
定禅寺通りは彫刻も必見。中央はエミリオ・グレコの「夏の思い出」(撮影:ニッポンドットコム編集部)

1986年から続く仙台の冬の風物詩「SENDAI光のページェント」 © Sentia
1986年から続く仙台の冬の風物詩「SENDAI光のページェント」 © Sentia

ゆづ桜が春の園内を彩る「七北田公園」:1日コース

続いては、南北線でさらに北へ進んだ泉中央駅から徒歩5分、羽生さんが少年時代にトレーニングで汗を流した「七北田(ななきた)公園」を散策。園内中央にある都市緑化ホールの近くには、五輪2連覇の功績をたたえて「ゆづ桜(陽光桜)」が2018年に植樹された。春には鮮やかな花が来園者を迎え、夜にはライトアップであでやかに輝く。

羽生さんが学校行事でよく訪れたという七北田公園とゆづ桜(中央)(撮影:ニッポンドットコム編集部)
羽生さんが学校行事でよく訪れたという七北田公園とゆづ桜(中央)(撮影:ニッポンドットコム編集部)

ゆず桜の傍らには、公園のベンチで撮影した羽生さんの写真とサインがある(撮影:ニッポンドットコム編集部)
ゆず桜の傍らには、公園のベンチで撮影した羽生さんの写真とサインがある(撮影:ニッポンドットコム編集部)

ホームリンクで滑走!「アイスリンク仙台」:1日コース

1日コースのハイライトは七北田公園から徒歩20分、泉中央駅から宮城交通バスに乗れば10分程度で着く「アイスリンク仙台」。4歳からスケートを始めた羽生さんのホームリンクで、16歳だった2011年3月11日には東日本大震災に遭遇した場所だ。練習中に激しい揺れに襲われ、スケート靴を履いたまま、はうように屋外へ避難したという。

仙台市内で多くの犠牲者、避難生活者が出る中、他県で練習を再開した羽生さんは“自分だけスケートをしていていいのか?”と自責の念にさいなまれたそうだ。しかし、翌年には世界選手権メダリストとなり、3年後には男子シングルで日本史上初の五輪金メダルを獲得。彼の活躍は東北の人々に希望を与え、復興を後押しした。

年中無休でアイススケートが楽しめるアイスリンク仙台(撮影:ニッポンドットコム編集部)
年中無休でアイススケートが楽しめるアイスリンク仙台(撮影:ニッポンドットコム編集部)

羽生さんや荒川さんが練習に明け暮れたリンク(写真提供:アイスリンク仙台)
羽生さんや荒川さんが練習に明け暮れたリンク(写真提供:アイスリンク仙台)

羽生さんを育んだリンクで自分も滑ることができるのは、ファンにとってはたまらない体験だろう。館内には羽生さんに加え、荒川さんの展示コーナーがあり、一般営業時間内であれば見学無料。ただ、子ども向けの教室や貸し切りの時間もあるので、公式ホームページの予定表を確認してから訪れ、練習の邪魔にならないよう注意したい。

アイスリンク仙台で2022年8月10日、プロ転向後初の練習を公開した羽生さん(時事)
アイスリンク仙台で2022年8月10日、プロ転向後初の練習を公開した羽生さん(時事)

展示コーナーにある羽生さんのパネルは人気の撮影スポット(写真提供:アイスリンク仙台)
展示コーナーにある羽生さんのパネルは人気の撮影スポット(写真提供:アイスリンク仙台)

温泉後に「秋保神社」や「定義如来 西方寺」へ:1泊2日コース

半日コースを回ってから、仙台の「奥座敷」と呼ばれる市西部の秋保(あきう)温泉や作並温泉に宿泊するのが1泊2日コース。仙台駅から両温泉地へはバスやレンタカーで30分から1時間ほどかかる。秋保温泉にゆっくりと浸かった翌日には、“勝負の神”として名高い「秋保神社」を目指そう。羽生さんがソチ五輪後にお礼参りに訪れたことで知られ、境内にずらりと並ぶ奉納のぼりは壮観だ。

作並温泉からは、同じ青葉区の山間に位置する「定義如来(じょうぎにょらい) 西方寺」へ。800年の歴史を持つ平家ゆかりの浄土宗寺院で、地元民には「定義(じょうげ)さん」と親しまれ、羽生さんも家族とたびたび訪れたそうだ。

定義如来のシンボル・五重塔(© Sentia)
定義如来のシンボル・五重塔(© Sentia)

門前町の「定義とうふ店」に飾られる彼のサインには「いつもお世話になってます!」と記されるように、名物の三角定義油揚げが好物とか。揚げたてを店頭で頬張りながら、羽生さんの生い立ちや隠れた努力、苦悩などを感じられる仙台の旅を思い出に刻み、締めくくるのがおすすめだ。

店頭のテーブル席で、アツアツの三角定義油揚げが堪能できる定義とうふ店(撮影:ニッポンドットコム編集部)
店頭のテーブル席で、アツアツの三角定義油揚げが堪能できる定義とうふ店(撮影:ニッポンドットコム編集部)

しょうゆとニンニク七味をかけると絶品!(撮影:ニッポンドットコム編集部)
しょうゆとニンニク七味をかけると絶品!(撮影:ニッポンドットコム編集部)

取材・文・撮影=ニッポンドットコム編集部

バナー:2018年平昌五輪で「SEIMEI」を熱演する羽生さん(左:時事)と、フィギュアスケートモニュメント(ニッポンドットコム編集部撮影)

東北 宮城 仙台市 羽生結弦 フィギュアスケート 聖地巡礼 冬季五輪 金メダリスト