福島・会津の郷土玩具「赤べこ」がSNS世代にブーム!? 「飾る縁起物」から「持ち歩くマスコット」へ
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“赤い牛”が地域のシンボルに
赤色のずんぐりした姿で、首をゆらゆらと揺らす様子が愛らしい「赤べこ」。福島県西部・会津地方で縁起物や魔よけとして古くから親しまれてきた郷土玩具で、「べこ」とは東北の方言で牛を意味する。
発祥の地は、奥会津の玄関口・柳津町にある臨済宗の古刹(こさつ)「圓藏寺(えんぞうじ)」とされる。江戸時代初頭の1611(慶長16)年、大地震で圓藏寺の伽藍(がらん)が倒壊。その後、本堂の「虚空蔵堂」を崖上に再建することとなったが、木材は川で運ばれてくるので、険しい斜面を運び上げるのに難儀していた。すると、どこからともなく赤毛の牛の群れが現れ、運搬作業を手伝ってくれたという。このけなげでたくましい赤牛の霊験にあやかろうと、縁起物として張り子の人形が作られ始めたのだ。
さらに会津地方で天然痘が流行した1713(正徳3)年、赤べこを持っていた子どもには感染しないという言い伝えがあり、それ以来、厄よけや無病息災のお守りにもなったといわれている。胴体に描かれる黒い丸模様は、天然痘が治った後に残る「あばた」を表し、身代わりに病魔を引き受けてくれることを意味する。城下町の会津若松では、武士の内職として張り子作りが奨励されていたため、赤べこは「起き上がり小法師(こぼし)」と並ぶ名産品となった。

柳津町「きよひめ公園」では、巨大な赤べこ・福太郎と記念撮影できる。左に見える只見川から崖の上に立つ虚空蔵堂まで、赤牛が木材を運んでくれたという

境内では福太郎の妻・満子が、赤べこ発祥の地であること伝えている
現代でも赤べこは郷土のシンボル。会津若松市ではバスの外装やバリケードフェンス、マンホールの蓋などさまざまなものにあしらわれ、JR会津若松駅や鶴ヶ城市民公園には巨大なモニュメントが立っている。
発祥の地・柳津町も負けじと、圓藏寺や道の駅などにモニュメントを設置。観光客の目を楽しませるだけでなく、写真がSNSで拡散されるなど町のPRに役立っている。

会津若松市郊外にある「赤ベコ公園」は、赤べこを模した水飲み場や滑り台などの遊具が並ぶ

道の駅に併設している物産館「ほっとinやないづ」では、福太郎と満子の長男・もうくんが出迎えてくれる
“SNS映え”で若者の心をつかむ
かつて“ベタな土産物”というイメージだった赤べこは一転、レトロで愛らしいキャラクターとしてSNS世代の心をつかんでいる。つぶらな瞳で“ボブルヘッド”のように首を振る姿は、「かわいい」「癒やされる」と拡散されやすいのだろう。伝統工芸の枠を超え、ぬいぐるみやチャームなどで赤べこをマスコット化したプロダクトの影響も大きい。
土産物卸売会社「明星企画」(会津若松市)は、赤べこがモチーフのグッズを“赤”にこだわらず、豊富なカラーバリエーションで展開。中でも2023年4月に発売したご当地カプセルトイの貯金箱は、全色コンプリートを狙う人も多く10万個を超える大ヒット。カラー変更した第2弾、メタリックバージョンの第3弾も人気だ。さらに26年4月には立体樹脂シールを発売すると、手帳やスマホに貼ったり交換したりして楽しむ「シル活」ブームに乗って、2カ月余りで3万6000枚が完売した。

ヒット商品「色彩豊かなべこの貯金箱2」「赤べこぷっくりキラキラシール」(明星企画提供)

X(旧ツイッター)で4.5万いいね・表示回数240万回以上を記録した「アカベコランド」の投稿
SNS映えするグッズを取りそろえた上、職人の制作風景の見学や絵付け体験などを通じて赤べこファンを増やしているのが、会津若松市の「アカベコランド」。2024年4月に名所「さざえ堂」で知られる飯盛山で誕生し、今では市街中心地の七日町、JR会津若松駅前にも展開している。
特に絵付け体験は、外国人ツアー客や修学旅行生に好評だ。赤一色の土台に模様を付けるだけでなく、白地に好きな色を塗るコースもあって、世界に一つだけの“マイべこ”を制作できる。透明エアパッケージに入れて持ち帰りながら、マイべこと旅の記念写真を撮るのも楽しい。

カラフルなべこグッズ数百種類が並ぶ「アカベコランド飯盛山店」

赤べこをモチーフにした多彩なアイテムを扱う。「クリスタルあかべこ」(上左)などの自社製品やサンリオキャラクターのご当地グッズ(下・中央左)が人気

絵付け体験は飯盛山店と七日町店(上右)で実施している。定番の赤より、“推し色べこ”にチャレンジできる白地の方が人気だそう
アカベコランドの鹿目真実さんは、近年の赤べこブームについて「マツコ・デラックスさんがコレクターだとテレビで紹介されたのがきっかけで、若い方の注目が高まったのでは。コロナ禍には“疫病退散の縁起物”という面でも話題になりました」と見ている。
ポップなアイテムが満載で若者にうけているが、親会社は創業約300年の老舗「白河だるま総本舗」(白河市)。長年培ってきた職人技、ものづくりのノウハウを生かして、赤べこの製造も手掛けてきた。歴史に裏打ちされた“オリジナルべこ”も店内に展示しており、伝統工芸の奥深さにも触れられる。

赤べこの基礎知識の掲示(上左)、喜多方ラーメン「河京」など企業・団体の特注赤べこ(非売品)の展示も楽しめる

十二支の動物姿の「干支(えと)べこ」(上)やJR東日本とコラボした新幹線べこ(下左)も手に入る。外国人客では特に台湾のゲストが多く、赤地に金の配色の定番品は「縁起がいい」と好評
アップデートする伝統工芸
今夏には、印刷大手の大日本印刷が「AN-IPPON(アニッポン)」ブランドを新設し、世界中で人気のアニメ『NARUTO -ナルト-』とコラボした赤べこの北米販売を開始している。日本のアニメIPを活用して47都道府県の工芸品を海外に展開することを目指しており、その第1弾商品として赤べこをラインアップした。
伝統を守りつつ、柔軟にアップデートを続ける赤べこ。「癒やしキャラ」として会津の人々に寄り添いながら、インバウンドを含む観光客、海外のアニメファンやキャラクター好きまで笑顔にしている。

会津の職人が手づくりした「Akabeko figures NARUTO SHIPPUDEN」(大日本印刷提供)
取材・文・撮影=ニッポンドットコム編集部
バナー写真:鶴ヶ城市民公園の赤べこフォトスポットと「アカベコランド」のオリジナルグッズ

