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江戸期以前の天守が現存する12の城 : 重要文化財編

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明治時代の廃城令によって多くの城は取り壊され、わずかに残った城も、太平洋戦争中の空襲で焼け落ちるなどしてほとんどが失われてしまった。江戸時代以前に建てられ、現代まで奇跡的に残ったわずか12の「現存天守」のうち、重要文化財に指定されている7城を紹介する。

日本にはかつて、大小含め2万5000以上もの城があったといわれる。城は居住の場所であり、政治の拠点であり、戦の攻守の要であり、権力の象徴でもあり、城を中心として町が栄えた。しかし、江戸時代の一国一城令、明治時代の廃城令によって多くの城は取り壊され、わずかに残った城も、太平洋戦争中の空襲で焼け落ちるなどしてほとんどが失われた。

現在は全国に約200の城があるが、観光資源として戦後に再建されたものも多く、江戸時代以前からの天守が現存しているのはわずか12城。このうち5城は国宝、7城は重要文化財に指定されている。重要文化財7城を紹介する

桜の名所・弘前城 

写真提供 : 青森県観光連盟
写真提供 : 青森県観光連盟

弘前藩(現在の青森県の西側)を治めた津軽氏の居城で、現存12天守の中では最北にある。天守が残る弘前公園は、かつての城郭にあたる。公園内には300本以上の樹齢100年を越すソメイヨシノや、シダレザクラの巨木があり、桜の名所としても知られる。

■弘前城プロフィール

  • 場所 : 青森県弘前市下白銀町1(弘前公園内)
  • アクセス : JR弘前駅から徒歩30分、タクシー10分
  • 現存天守完成時期 : 1810年 
  • 見学費用 : 弘前公園の本丸入場料として大人310円 / 子ども100円
  • 弘前公園ウェブサイト(日本語) (英語)

全国的に珍しい石瓦の城・丸岡城(別名 霞ヶ城)

写真提供 : 福井県観光連盟
写真提供 : 福井県観光連盟

坂井市教育委員会の調査によると、天守は寛永年間(1624~1643)に整備されたもの。全国的にも珍しい石製の瓦ぶき(福井県産の笏谷石)の屋根で、天守全体に推定75~120トンの重さがかかっている。天守は1948年の福井地震によって倒壊したが、柱や梁など主要構造材は江戸時代のものをそのまま使い、修復再建された。

編集部注記 : 坂井市教育委員会が2019年3月26日に公表した「丸岡城天守学術調査報告書」 に基づき、同年3月27日に丸岡城の項目を書き換えました。

■丸岡城プロフィール

  • 場所 : 福井県坂井市丸岡町霞町1-59
  • アクセス : JR福井駅からバス35分、「丸岡城」下車 
  • 入場料 : 大人450円/小中学生150円(丸岡城と歴史民俗資料館との共通入場券)

難攻不落とうたわれた山城・備中松山城 

写真提供:岡山県観光連盟
写真提供:岡山県観光連盟

標高430メートルの臥牛山頂上付近に位置し、現存天守の中では最も高い場所にある。登城坂の周囲は、高さ10メートル以上の巨大で切り立った岩壁がそびえ、かつては“難攻不落の城”として名をとどろかせた。鎌倉時代に築かれた城を起源とし、現存の天守は1683年に修築されたもの。

9月下旬~4月上旬の早朝は臥牛山付近に雲海が発生しやすく、展望台から臨む「雲海に浮かぶ備中松山城」は幻想的。

■備中松山城プロフィール

  • 場所 : 岡山県高梁市内山下1
  • アクセス : JR高梁駅から乗合タクシー又はふもとの駐車場からシャトルバス利用で山の中腹まで。その先は20分程度の山道を徒歩で上る。
  • 入城料 大人500円 / 小・中学生200円

石垣の名城・丸亀城

写真提供 : 香川県観光協会
写真提供 : 香川県観光協会

江戸時代初期の城郭石垣を築く技術が最高水準に達した頃に作られた「石垣の名城」。天守は小さいが、山麓から山頂まで四重に重ねられた総高60メートルに及ぶ石垣が見どころ。緩やかだが荒々しい「野面積み」、端正な「算木積み」など様々な石垣の積み方を見ることができる。

■丸亀城プロフィール

  • 所在地 : 香川県丸亀市一番丁
  • アクセス : JR丸亀駅より徒歩15分
  • 現存天守完成時期 : 1660年
  • 入城料 : 大人 200円 / 小・中学生 100円

連立天守を備える城郭建築・伊予松山城(別名 勝山城、金亀城)

写真提供 : 愛媛県観光物産協会
写真提供 : 愛媛県観光物産協会

現存12天守の中で唯一、親藩(しんぱん・徳川家康の直系男子の血を引く藩)の松平家が城主となった城で、屋根瓦などに「葵の御紋」がある。大天守と小天守、隅櫓などを渡り廊下で結ぶ連立式天守で、江戸時代最後の城郭建築。1784年の落雷で焼失した後、1854年に再建落成された。

■伊予松山城プロフィール

  • 所在地 : 愛媛県松山市丸之内1
  • アクセス : JR松山駅から市内電車10分、松山空港からリムジンバス30分の「大街道」下車後、ロープウエーで8合目まで。その後、さらに徒歩10分
  • 現存天守完成時期 : 1835年
  • 天守観覧券 : 大人 510円 / 小学生 150円

築城の名手による海城・宇和島城(別名 鶴島城)

写真提供 : 愛媛県観光物産協会
写真提供 : 愛媛県観光物産協会

「築城の名手」と呼ばれた伊予今治藩主の藤堂高虎(とうどうたかとら)の手による城。北と西は宇和島湾に面し、南と東の堀に海水を引き入れた海城。城の外郭(そとくるわ)は不等辺五角形で、4方向から攻め来る敵の死角を確保をするなど、守りの工夫が凝らされている。1671年の大改修時の姿を今に残す。

■宇和島城プロフィール

  • 所在地 : 宇和島市丸之内1-127
  • アクセス : JR宇和島駅よりバス3分、南予文化会館前または宇和島バスセンター下車後、城山登山口から天守まで徒歩15分
  • 現存天守完成時期 : 1671年
  • 入城料 : 大人 200円  (中学生以下無料)

日本で唯一、本丸の建築群が現存する高知城

写真提供 : 高知県観光コンベンション協会
写真提供 : 高知県観光コンベンション協会

関ケ原の合戦で功績を上げた山内一豊が1611年に築城。1727年、城下町の大火で城郭のほとんどを焼失、1729年から再建工事に着工。天守以外にも、本丸御殿、西多聞櫓、追手門など本丸の建造物群がほぼ完全な形で残されている全国で唯一の城。

■高知城プロフィール

  • 所在地 : 高知市丸ノ内一丁目2番1号
  • アクセス : JR高知駅より徒歩25分 又は バス10分(高知城前下車)
  • 現存天守完成時期 : 1749年
  • 入城料 : 420円(18歳以下無料)

「現存12天守 : 国宝編」はこちら

バナー写真 : 雲海に浮かぶ備中松山城(写真提供 : 岡山県観光連盟)

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