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細る基礎研究、ノーベル賞も困難に?—国費横ばい、論文減少

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日本は科学分野の基礎研究が細っている。今やノーベル賞受賞の常連国だが、今後も国際的な研究者を輩出できるのか、政府は危機感を抱いている。

2019年の科学技術白書は、研究の量と質を測る指標として論文数の国際比較を取り上げ、日本は2004-06年平均で米国に次ぎ世界2位だったのが、14-16年平均では4位に後退したとしている。引用数が各分野で上位10%に入る「トップ10%」論文数は04-06年平均の4位から、14-16年平均では9位に後退。代わって中国が5位から2位に浮上した。

トップ10論文数の推移

2004〜06年 2014〜16年
1 米国 米国
2 英国 中国
3 ドイツ 英国
4 日本 ドイツ
5 中国 イタリア
6 フランス フランス
7 カナダ オーストラリア
8 イタリア カナダ
9 オランダ 日本
10 スペイン スペイン

出典:2019年版科学技術白書

基礎研究は基本原理の解明など地道な学問であり、白書は「目に見える成果が現れるまで長い時間を要したり、成果がどのような役に立つかが直ちに分からなかったりすることが多い」と指摘。商品化など即効性が重視される現代において軽視されがちだ。

基礎研究の停滞は環境の悪化が背景にある。白書によると、国立大学に対する国の補助金である法人運営費交付金は2018年度までの4年間はほぼ横ばい。18年度は04年度比で11.6%減少した。また、理学系大学教員らの研究活動は02年当時、職務時間全体の56.9%を占めていたが、13年には51%に低下。その分、教育活動が20.5%から22.7%に上昇し、学生指導などに時間を割かれて研究時間が減っていることが浮き彫りになっている。

日本のノーベル賞受賞者は計26人。そのうち生理学・医学、物理学、化学の3分野だけで23人を占め、これまでのところ「科学大国」と言える。ただ、2016年に生理学・医学賞を受賞した大隅良典氏は、応用研究重視の現状を「とても危惧している」とし、「基礎研究がないと新しい進歩はない」と訴える。白書も「国際的に傑出した成果を生み出す研究者を輩出し続けることができるのか」としている。

写真:PIXTA

ノーベル賞 科学技術白書 基礎研究 応用研究 大隈良典