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先進国で唯一「夫婦同姓」義務の日本 : 妻の姓選ぶカップルわずか4%

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日本は先進国で唯一「夫婦同姓」が義務化されている。別姓導入に反対する人は「夫婦の一体感を損なう」と言うが、日本以外の先進国には夫婦の一体感が存在しないということ?

日本では、民法750条で「夫婦の同氏(=同姓、同名字)」が規定されている。別姓も選択可能な国際結婚を除き、法律的に「結婚」するためには、夫婦のどちらかが姓(名字)を変えなければならない。

民法の条文は「夫又は妻の氏を称する」となっているが、2017年の人口動態統計調査によると、婚姻件数60万6866件のうち、妻の姓を選んだのは2万5049組で、全体の4.1%。女性にとっては、「結婚=姓を変える」ことが避けて通れない問題となっている。

実は、夫婦同姓の歴史はそれほど古くはない。一般の人が姓を名乗れるようになったのは、明治時代に入ってから。徴税や兵籍管理のために、戸籍制度を整備するためだったと言われる。当初は、妻は結婚後も実家の姓を名乗るとされたが、1896年、民法で「夫婦は同じ姓」を名乗ることが規定された。つまり、夫婦同姓はわずか120年ほどの歴史ということになる。

女性の社会進出が進み、男女が対等なパートナーとして家事や育児で協力し合うライフスタイルも増えつつある中で、選択的夫婦別姓を求める声は強まっている。しかし、与党自民党内では「別姓は家族の一体感を損なう」などとして反対意見が根強い。2019年7月の参院選前の党首討論会でも、「夫婦別姓に賛成か?」との進行役の問いかけに対して、出席した7党の党首のうち、安倍晋三首相だけが挙手しなかった。ちなみに、法務省が把握する限り、先進国で夫婦同姓が義務とされている国は、日本以外にはないという。

「夫婦別姓」に関する社会の動き

江戸時代 農民・町民は氏を名乗ることは許されない
武家の女性は結婚後も実家の氏を名乗る
1870(明治3) 平民に氏の使用を認める
1875(明治8) 氏の使用の義務化(徴税や兵籍管理のため)
1876(明治9) 夫婦別氏=妻は実家の氏を用いることを規定
1896(明治31) 民法(旧法)が夫婦同氏を規定 
1947(昭和22) 改正民法(現法)が「夫又は妻の氏を称する」として、夫婦同氏を規定 
1988 国立大学の女性研究者が、仕事上、旧姓の使用を求めて提訴
93年敗訴、96年高裁で和解
1996 法制審議会が選択的夫婦別姓制度を導入する民法改正案要綱を答申
2001 国家公務員の通称使用が認められる
2002 法務省が別姓法案準備するも、自民党内の反発が強く、提出に至らず
2006 パスポートの通称併記が認められる
2010 法務省が別姓法案準備するも、連立与党内で意見の食い違いがあり提出に至らず
2011 「夫婦同姓定める民法規定は違憲」として5人が初提訴
15年最高裁が「夫婦同氏を定める民法は合憲」と判断。「夫婦同氏は社会に定着し、家族の呼称を一つに定めることには合理性がある」
2018 結婚の際に妻の姓を選択し、仕事では旧姓を使用しているソフトウエア開発会社サイボウズの青野慶久社長らが「夫婦同姓によって仕事に支障をきたした」として国に損害賠償を求める
19年東京地裁が請求棄却

法務省ウェブサイト、各種報道を基に編集部作成

国立社会保障・人口問題研究所が5年ごとに実施している「全国家庭動向調査」では、「夫婦が別姓であってもよいか」に対する回答が、2018年の調査で初めて50%を上回った。

バナー写真 : PIXTA

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