どうなる、五輪マラソン!? : ベースとなるらしい北海道マラソンコースを概観
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北海道マラソンは、日本国内で唯一、夏に行われるフルマラソン大会。1987年にわずか439人のエントリーで始まったが、現在では約2万人が参加する国内でも有数のマラソン大会となった。
夏開催の五輪や世界陸上に照準を合わせて、日本のトップクラスのランナーが出場することでも知られる。1995年大会では、バルセロナ五輪銀メダリストの有森裕子選手が出場し、翌1996年のアトランタ五輪の出場の代表切符をつかんだ。2020年五輪の女子マラソン代表に内定している前田穂南選手と鈴木亜由子選手はそれぞれ17年、18年の北海道マラソンの優勝者だ。
北海道マラソンのコースは札幌市の中心部を東西1.5キロメートルにわたって貫く「大通公園」がスタート地点。札幌のランドマーク「さっぽろテレビ塔」の電光時計のカウントダウンでスタートするのが恒例となっている。
大通公園は1871(明治4)年、札幌中心部を南北に隔てる防火帯として設置されたもの。ライラックやハルニレなど92種、約4700本の木々と花壇や芝生が整備された都会のオアシス。冬の「さっぼろ雪まつり」の会場として知られるが、夏は7月下旬から約1カ月にわたって「さっぽろ夏祭り」の会場となる。期間中、公園内には1万3000席のビアガーデンが出現。道内各地の名物料理や世界の地ビールの屋台が並び、北海道の短い夏を楽しもうと、連日、多くの市民や観光客でにぎわう。
五輪のマラソン競技は、ビアガーデンの開催期間と重なることが予想されている。ゴール地点の確保や、警備の都合でビアガーデンが縮小や中止に追い込まれることを市民は恐れており、SNS上では「札幌の夏の楽しみを奪わないで!」と悲鳴のような声が上がっている。
コースはまず市内を南下する。札幌随一の繁華街「すすきの」を通り抜けた先には、正面に緑豊かな中島公園が待ち構える。その先の幌平橋の上からは、ゆったりと流れる川辺の風景が目を楽しませてくれる。
約5キロに南下したところから、再び、札幌市中心部に向かって北上する。観光名所である札幌時計台のそばを通過し、札幌駅の北側に抜ける。
ここまでの約10キロがコース内で唯一のこう配のある区間で、ここから先の30キロはほぼ平坦な道が続く。
北海道大学の脇を通り抜けた先に待ち受けるのが「新川通」だ。折り返し地点をはさんで往復13キロメートルの区間は、「精神力を試される最大の難所」として知られる。
いかにも北海道らしい片側3車線のまっすぐ伸びる幹線道路には高い建物や木陰になるような高い街路樹がほとんどなく、天候が良ければ直射日光との戦いを強いられる。
札幌駅のJRタワーから新川通方向を望む写真で見ると、画面中央を左右に走る高速道路より手前側は街路樹が多く、大小さまざまな建物から街の営みが感じられる。ところが、高速道路を越え、下流に向かうにつれて、木々の緑も建物も少なくなっているのが見てとれる。
かつて、北海道マラソンに出場した市民ランナーは「景色が代わり映えしなくて、予想以上につらかった。知り合いが応援に来てくれていなかったら心折れるところだった」と言う。実際に、棄権者が多く出るポイントでもある。
難所の新川通を過ぎると、コースは北海道大学内へ。緑豊かなキャンパスは、目にも楽しく、木陰もあり、レース終盤のランナーが気分を立て直すことができる。北大を抜けると、札幌都心部はもうすぐそこ。スタート地点と同じ大通公園でゴールだ。
〈コース外〉
当初、スタンド席がある札幌ドームを五輪マラソンの発着地点とする案が取り沙汰されていた。ドームはプロ野球・日本ハムとJリーグ・コンサドーレ札幌のホーム球場として利用されているが、陸上のトラックがない。トラック整備には巨額の改修費用がかかることや、ドーム手前で1キロで30メートルを上る急坂があるため、この案はお蔵入りとなったようだ。
バナー写真 : さっぽろ大通公園 バナーと文中写真は全て前田明裕撮影