Japan Data

「地元に根を張る」より「国とのパイプ」 : 知事の6割が元キャリア官僚

政治・外交 社会 地方

都道府県知事へのキャリアパスとして最も有力なのは「中央官庁のキャリア官僚」だというのは、なんとも逆説的ではないだろうか。国を熟知し、国の顔色をうかがい、国からいかに予算をつけてもらうか。地方分権への道はかくも険し。

医療や介護、保育支援など住民に身近で、地方によって事情が異なる課題は地方が権限を持って地方で解決する――2000年に地方分権一括法が施行され、国から地方自治体への権限の委譲が進められている。主従関係にあった国と地方の関係も法的には対等となった。

では、全国47都道府県の行政の長である知事はどんな人なのか?

自治体職員や地方議会議員として地元に根を張り、地域の問題に取り組んできた人は意外にも少なくわずかに8人。大学卒業後、県の職員となって副知事まで勤め上げ、その後、知事選を経て知事となった「生え抜き」は、長崎県の中村法道氏のみ。秋田県の佐竹敬久知事は県庁職員から、秋田市長を経て、県知事に就任した。

一方で、中央省庁の官僚出身者が全体の6割近い27人に上る。官僚出身者が知事選で必ずと言っていいほど強調するのが「国との太いパイプ」だ。官僚時代の中央の政・官人脈を活かし、自治体の事業への支援や予算配分を獲得できる(かもしれない)ことは、地方にとって大きな魅力なのかもしれない。

官僚出身のうち10人は自らの出身地ではない県の首長となっているが、それを可能にしているのは中央官庁から地方自治体への出向人事にある。20代の頃から年次と相手自治体の規模に応じて課長、部長、局長、副知事などのポストに就く。若手の頃に課長級で出向した県に、40~50代で局長や副知事として再出向するケースもある。こうした機会に地方議会や地方財界との結びつきも強くなり、首長選に担ぎ出されるのだ。

国の事情を熟知し、与党の意を忖度(そんたく)できる首長。結局、地方は独自性を発揮するよりも、国の顔色をうかがう方が良いということ?

知事就任前の主な職歴(緑ハイライトは中央官庁の官僚出身)

自治体 名前 出身地と異なる自治体で首長となっているケースは△ 知事就任前の主な職歴
北海道 鈴木直道 △ 東京都職員(夕張市市民課出向)、夕張市長
青森 三村申吾 会社員、百石町長、衆院議員
岩手 達増拓也 外務省、衆院議員
宮城 村井嘉浩 △ 陸上自衛官、宮城県議
秋田 佐竹敬久 秋田県職員、秋田市長
山形 吉村美栄子 行政書士
福島 内堀雅雄 △ 総務省(副知事として福島県出向)
茨城 大井川和彦 経済産業省、IT企業役員
栃木 福田富一 栃木県職員、宇都宮市議、宇都宮市長
群馬 山本一太 新聞記者、団体職員、参院議員
埼玉 大野元裕 中東調査会研究員、衆院議員
千葉 森田健作 △ タレント、衆院議員
東京 小池百合子 △ ニュースキャスター、衆院議員(環境相、防衛相など)
神奈川 黒岩祐治 △ ニュースキャスター
新潟 花角英世 国土交通省(副知事として新潟県出向)
富山 石井隆一 総務省
石川 谷本正憲 △ 総務省(副知事として石川県出向)
福井 杉本達治 △ 総務省(総務部長、副知事として福井県出向)
山梨 長崎幸太郎 △ 財務省(山梨県企画部出向)、衆議院議員
長野 阿部守一 △ 総務省(企画局長、副知事として長野県出向)
岐阜 古田肇 経済産業省
静岡 川勝平太 △ 早稲田大学教授、静岡文化芸術大学学長
愛知 大村秀章 農林水産省、衆院議員
三重 鈴木英敬 △ 経済産業省
滋賀 三日月大造 会社員、衆院議員
京都 西脇隆俊 国土交通省
大阪 吉村洋文 弁護士、大阪市議、衆院議員、大阪市長
兵庫 井戸敏三 総務省(副知事として兵庫県出向)
奈良 荒井正吾 運輸省(現・国土交通省)、参議院議員
和歌山 仁坂吉伸 経済産業省、ブルネイ国大使
鳥取 平井伸治 △ 総務省(総務部長、副知事として鳥取県出向)
島根 丸山達也 △ 総務省(環境生活部長、政策企画局長として島根県出向)
岡山 伊原木隆太 会社社長
広島 湯﨑英彦  通商産業省(現・経済産業省)、IT企業役員
山口 村岡嗣政 総務省
徳島 飯泉嘉門 △ 総務省(商工労働部長、県民環境部長として徳島県出向)
香川 浜田恵造 財務省
高知 浜田省司 総務省
愛媛 中村時弘 会社員、愛媛県議、衆院議員、松山市長
福岡 小川洋 経済産業省、内閣広報官
佐賀 山口祥義 総務省
長崎 中村法道 長崎県職員、副知事
熊本 蒲島郁夫 筑波大学教授、東京大学名誉教授
大分 広瀬勝貞 経済産業省
宮崎 河野俊嗣 △ 総務省(地方課、財政課、副知事として宮崎県出向)
鹿児島 三反園訓 民放テレビ政治部記者
沖縄 玉城デニー タレント、沖縄市議、衆院議員

バナー写真:時事

この記事につけられたキーワード

選挙 地方議会 地方創生 官僚 地方分権 地方自治体 総務省 知事

このシリーズの他の記事

    もっと見る

シリーズ記事一覧へ

もっと見る