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米国産牛肉、お手頃価格に-貿易協定で関税率引き下げ

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大手スーパーが年明けから米国産牛肉のセールに力を注いでいる。日米の貿易協定が1月1日に発効し、米国産牛肉に対する関税率がこれまでの38.5%から26.6%に引き下げられたため、「1~2割の消費者還元」を打ち出した。関税率は2033年度まで下げられ、最終的に9%となる。米国産牛肉が食卓やレストランでより身近な存在になりそうだ。

日米両政府は2019年9月、2国間の貿易協定に最終合意した。協定は日本が牛・豚肉、チーズなどの農産品市場を環太平洋連携協定(TPP)と同水準で開放し、米国が自動車・同部品を除く工業品の関税を撤廃・削減するという内容となった。

交渉がわずか半年という「異例の短期間」(農業団体幹部)で決着したのは、18年1月1日に発効したTPPの存在が大きい。米国抜きの11カ国によるTPPの発効直後、オーストラリアなどTPP加盟国産の牛肉関税率は38.5%から27%台まで下がり、対米税率と10%ポイントの差が生じた。米国の農畜産業界には「日本での競争環境が豪州などに比べて不利になる」との懸念が強まり、米政府は日本に「TPP同様の扱い」を求めて早期妥結へと押し切った。

日米貿易協定に基づき、20年1月以降、米国産の牛肉はオーストラリアやカナダ産などと同水準で関税が低くなっていく。大手スーパーのイトーヨーカ堂やイオンリテールなどは相次ぎ米国産牛肉のフェアを開き、これまでよりも1~2割安い値札を付けた。ステーキに好まれる米国産の「アンガスビーフ」など有名ブランドもあり、政府関係者は「米国産のシェアが広がる可能性がある」とみる。

一方、輸入増加により国内の生産農家には逆風が吹く。政府の試算では、日米協定発効により国内の牛肉生産額は最大約470億円の打撃を受ける。北海道などの農業団体からは「競争力強化のため一層の政府支援が必要だ」との声が出ている。

バナー写真:PIXTA

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