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免許返納、過去最高の60万人―警察庁まとめ : 高齢者の悲惨な事故が契機に

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マイホームを手に入れた頃はスタスタと歩けた駅からの坂道が、年を取った今は、まるで難所のように立ちはだかる。「ちょっと病院まで」「駅の反対側のスーパーまで」の足を確保したい―というのが高齢者が免許を手放せない理由だろう。高齢化が進む今、悲惨な事故を起こさないためにも、社会全体で考えなければならない問題。

警察庁の運転免許統計によると、2019年に免許証を自主返納した人の数が、1998年の制度導入以降最多の60万1022人(前年比17万9832人増)となった。

75歳以上の運転者の返納が35万428件(同5万8339件増)で全体の58%を占めるが、75歳未満も前年からほぼ倍増の25万594人と大幅に増えた。

2019年4月に東京・池袋で旧通産省幹部の高齢男性が運転する車が暴走、母子が死亡する事故が発生した。これを契機に、社会的にも高齢運転を問題視するムードが一段と強まったことが、自主返納を促進したと考えられる。また、各地の自治体・警察では、返納すると、タクシーやバスの割引などの特典がある運転経歴証明書を交付するなどして、返納を促している。

公共交通機関の発達した都市部では免許返納へのハードルは比較的低いが、地方では免許を返納した途端に交通難民となる可能性もある。現在、運転免許保有者の22.9%が65歳以上となっている。人口のボリュームゾーンである段階の世代が間もなく75歳を迎えることから、高齢者の移動支援など免許返納がしやすい環境整備が求められそうだ。

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