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矯正教育で性犯罪の再犯抑止:受講者に明らかな差

社会

性犯罪者の再犯予防を目的に、刑事施設で実施している「性犯罪者処遇プログラム」。その受講者の再犯率は、非受講出所者の0.79倍に抑えられていることが分かった。法務省は「指導による抑止効果が確認された」としている。

同プログラムは、自己の問題を認識させて改善を図り、再犯防止の具体的な方法を習得させることが主な内容。1単元100分で、グループワークや個別の取り組みを中心に週1回または2回のペースで行われる。期間は個々の受刑者の状況に応じて、高密度(9カ月)、中密度(7カ月)、低密度(4カ月)に分かれている。

2020年3月に公表された研究報告によると、2012~14年に出所した元受刑者のうち、プログラムの受講が必要とされ実際に受講したグループ(1444人)と、実際には受講しなかったグループ(324人)の3年以内の再犯率を調べた。

受講者グループの再犯率は27.3%で、非受講者グループ(38.0%)より10.7ポイント低かった。再犯の罪種を性犯罪に絞ると全体的にさらに低下し、受講者グループは15.0%、非受講者22.5%。両者の差は7.5ポイントだった。

強姦罪で服役した元受刑者に絞ってみると、受講者グループの再犯率(21.9%)は非受講者グループ(34.2%)より12.3ポイント低かった。一方、強制わいせつ罪や迷惑行為防止条例違反などで服役した元受刑者では、プログラム実施の効果を裏付ける結果は得られなかった。

指導期間別では、中密度の受講者グループの再犯率(19.4%)が非受講者グループ(34.3%)よりも14.9ポイント低かった。高密度では指導効果の統計的裏付けは得られず、低密度で標本数が少なかったために分析は行わなかった。

性犯罪者処遇プログラムの内容

項目 方法 高密度 中密度 低密度
オリエンテーション 講義
準備プログラム グループワーク 必修 必修
本科
第1科 自己統制 グループワーク
個別課題
必修 必修 必修
(短縮版)
第2科 認識の歪みと変容方法 グループワーク
個別課題
必修 選択
第3科 対人関係と親密性 グループワーク
個別課題
必修 選択
第4科 感情統制 グループワーク
個別課題
必修 選択
第5科 共感と被害者理解 グループワーク
個別課題
必修 選択
メンテナンス 個別指導
グループワーク

法務省では全対象者、中密度、強姦罪について「指導の効果が確認された」と評価。一方で、指導効果の統計的裏付けが取れなかった高密度については、「指導時間数という量的な面で不十分である可能性がある」などとし、強制わいせつ罪などについては「指導のあり方について検討が必要」と分析している。

バナー写真:(サントー/PIXTA)

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