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医師、増える海外医学部卒:国家試験合格者が10年で3倍に

社会 医療・健康

医師国家試験の合格者のうち、海外医学部卒業生の数が増えている。この10年ほどで約3倍に増加。割合はわずか1%ほどだが、日本の大学医学部の定員調整に影響を及ぼしかねない今後の課題と認識され始めている。

厚生労働省のまとめによると、2018年度の医師国家試験合格者9029人のうち、海外医学部の卒業生は全体の1%にあたる95人だった。10年前の08年度(34人)と比べると、3倍近く増加している。

95人を国籍別に見ると、日本人は42人。これまでは10人前後で推移していたが、13年度に前年度から一気に18人増えて28人となり、その後もおおむね増加傾向にある。そのほかの国籍で多い中国、韓国は、近年増加しているものの30人以内で推移している。結果として、国籍別では日本人の海外医学部卒業生の増加が目立っている。

多くの場合、海外医学部の卒業者は外国の医師免許を取得後、日本語での診療能力調査を事前に受けた上で医師国家試験の受験が認められる。この「本試験認定者」数の推移を学校所在国別で見ると、中国、韓国が上位を占める。一方で、近年はハンガリーが急増している。2010年度までは0。11、12年度にいずれも1人となった後、13年度には8人まで増加。その後もほぼ増加し、18年度には21人となって、全体の3位につけている。

日本人がハンガリーの医学校に向かう理由については、日本の私大医学部よりも学費が安いことや、英語で学べる点などのメリットが指摘されている。

医師数の過剰な増減、医師の地域的な偏りを防ぐため、日本政府は国内の大学医学部について、マクロ需給推計の結果を踏まえて入学定員などを長年調整してきた。近年では2008年度以降、医学部の入学定員が過去最大規模まで増員され、20年度は9330人となっている。地域医療に従事する医師養成を目的にした医学部定員に占める地域枠なども、同様に調整されてきた。

こうした状況の中で、国の「医療従事者の需給に関する検討会」では、日本国籍の海外医学部卒医師数の増加を注視。「今後、医師の需給、現行の偏在対策に影響を及ぼしうると考えられる」として課題に挙げている。

バナー写真:(foly/PIXTA)

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