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卵大好き! 年間292個も食べる日本人 : 長年、価格安定の “物価の優等生”

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生でも、ゆでても、焼いてもおいしい卵は、朝食のテッパンニューだ。しかも1年中、ほぼ同じ値段で買えることから、昔から「物価の優等生」と言われてきた。半世紀にわたって優秀な成績を収めてこられたのは、なぜ?

卵好きの日本人 年間292個を消費

意識して食べなくても、パンや麺類、総菜など、卵はさまざまな加工品に使われているので、日本人の年間消費量は意外と多い。農林水産省によると、国民一人当たりの年間消費量は、2019年で17.5キロ。Mサイズ(約60グラム)に換算すると、292個食べたことになる。1960年は約105個だったので、60年間で2.8倍に増えた。卵かけご飯やすき焼きなど、生で食べる食習慣に加えて、卵焼きや親子丼など日本人は卵をたくさん使う料理を好む。調理しやすくて、栄養価が高いこともあって、食卓に欠かせない国民食になった。

半世紀にわたって優等生の座をキープ

消費を伸ばした理由のもう一つは、価格の安さだ。同じ生鮮食品でも野菜や果物は、天候の影響を受けたり、生育が悪かったりすると、価格が変動するのに、卵はいつも安定している。それどころか、年中、スーパーで特売され、1パック(10個入り)100円を切ることさえある。

50年前にさかのぼって卵と食料全体の物価変動を比べると、1970年を100とした場合、食料全体の物価は2020年で3.5倍に上昇した。これに対し、卵は1.6倍と半分以下を維持しており、物価の優等生を数字が裏付ける。

半世紀にわたって優等生で居続けているのは、消費者にとって有難い。しかし、卵を産む鶏は生き物なので、真夏や真冬は産卵数が減り、春や秋になると増える。季節によって変動するのは、消費も同じで、冬はおでんやすき焼き、12月にはクリスマスケーキなどで重要が一気に高まるものの、夏場は落ち込む。それでも店頭価格は、1年を通して安定している。

しかし、卸売価格は需給バランスを反映し、季節ごとに変動する。生産も消費も下がる夏場に低迷するが、「月見」を売りにするハンバーガーチェーンやコンビニのサンドイッチなど季節商材の影響で秋から上がり始め、12月はクリスマスケーキやおせち料理需要のため、ピークを迎える。一方、1月は、年末年始の休業のために前倒しで取引される反動で値が下がる。

生き残りをかけ、大規模経営に転換

このため、採卵鶏農場は、価格が低迷すると鶏の数を減らし、高く推移すると数を増やすので、出荷量の増減に伴って価格が変動するサイクルを繰り返している。卵を産む雌鶏(成鶏雌)の飼養羽数は、1979年が1億2400万羽で、2019年には1億4200万羽と、わずかに増えただけにとどまる。しかし、飼養戸数は後継者不足や、えさ代の高騰などの理由で廃業が増え、1973年は24万7100戸だったのが、2019年には2120戸と100分の1以下になった。その代わり、1戸当たり成鶏雌の飼養羽数は、79年に501羽だったのが、20年後の99年には2万8200羽、さらに20年後の2019年は6万6900羽と飛躍的に増えた。農場は、たくさん産卵する鶏への切り替えや生産・流通コストの削減、労力がかからない鶏舎の建設などに取り組み、企業的な大規模経営ができる農場だけが生き残っている。

農水省によると、水田、畑作、果樹など13種類ある農業経営体の中で、2019年には採卵養鶏だけが赤字に転落。経営の厳しさを浮き彫りにしている。

新型コロナ、鳥インフルで価格に異変

2020年は新型コロナウイルス感染拡大による巣ごもり需要で、家庭用の消費が大幅に増えたことから、4月の標準取引価格は前年を大きく上回った。しかし、その後の緊急事態宣言によって業務・加工用の需要が激減し、5月に価格が下落。標準取引価格が、安定基準価格 161 円/キロを下回ったため、日本養鶏協会は価格の安定を図ろうと、生産調整を進める。

2021年4月は、昨年から発生が続いた鳥インフルエンザの影響で供給が細り、過去5年間で最高値を付けている。

食料自給率が38%(カロリーベース)と低い日本で、卵は国産が96%を占める。新鮮で衛生管理が徹底されているからこそ、食べられる卵かけご飯。国民食がいつまでも安心して食べられるよう、祈りたい。

バナー写真:PIXTA

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