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コシヒカリ帝国の覇権に陰り : 作付け比率がじわり低下

経済・ビジネス

レストランのメニューに「当店は〇〇産コシヒカリを使用しています」などの表記があるのは、「うちのご飯はおいしいですよ!」といった自信の表れ。長年圧倒的な人気を誇ってきたコシヒカリだが、少しずつ変化の兆しが出ている。

おいしいお米の代表格コシヒカリ。1978年産以降、42年間にわたって国内で作付けされる主食用米のトップの座に君臨する。96年以降2019年産までコシヒカリは作付け比率の30%台を維持し、2位以下に大きく差をつけている。続く「ひとめぼれ」「ヒノヒカリ」「あきたこまち」は99年以降、2~4位に定着し、この4品種で日本全体の約60%を占める。ちなみに、「ひとめぼれ」「ヒノヒカリ」「あきたこまち」はいずれもコシヒカリと別の品種との交配で生まれた “子ども” であり、コシヒカリファミリーの強さは圧倒的だ。

ただ、4品種シェアは2005年をピークに緩やかな減少に転じ、18、19年は2年連続で60%を割り込むなど、コシヒカリ帝国に陰りが出始めている。

18年に国による米の生産調整(減反)が廃止され、市場価格や需給バランスが崩れる危機感が産地に広がったことに加え、温暖化が進み、品種ごとの栽培敵地も変化しつつある。競争を勝ち抜くには、特定のブランド米だけに偏るのではなく、消費者のニーズや気候変動に対応できるよう多様なラインナップを持つことを生産者が志向するようになっているためだ。

銘柄分散の傾向は、「産地品種銘柄」の数にも表れている。米袋に表示される「○○産コシヒカリ」「〇〇産あきたこまち」などの「産地+ブランド名」は、農林水産省から設定を受けたもので、主食用うるち米の銘柄数は2009年から13年連続で増加し、21年産米は893となった。

都道府県別で産地品種銘柄が最も多いのは、新潟の40。次いで茨城34、秋田33、宮城、福島の32と米どころが上位を占める。大生産地ほど、リスクを分散し、コシヒカリ帝国の次の時代に備えているということか。

バナー写真 : PIXTA

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