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食品の年内値上げは1万品目突破、原油高・円安で「値上げの夏」

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原油価格高騰や円安進行を背景に、食品価格の上昇に歯止めが掛からない。夏場には「値上げラッシュ」を迎え、年内の値上げ品目数は1万を超えることが民間調査会社の調べで分かった。値上げ率は平均で13%に上るという。

帝国データバンクが食品主要105社を対象にした調査によると、2022年1月1日~6月1日の5カ月間に累計1万789品目で年内値上げの計画が判明した。このうち4770品目が5月までに値上げが実施されたほか、今後は6月に1500品目超、夏場の7、8月に計3300品目超、9月以降は1100品目超で値上げが予定されている。10月にはビールや炭酸飲料の値上げが控えている。

これまでの食品値上げの主因は、食用油と小麦粉の価格上昇だった。日本は食用油をカナダ産の菜種油に依存しているが、原料の不作で価格が高騰。小麦粉は、ロシアに侵略されているウクライナから出荷が途絶えており、全般に価格が上昇しているという。

さらに対ロシア制裁措置の一環として、欧米で原油禁輸の動きが広がり、原油価格が高騰したり、日米金利差の拡大で円安(6月7日の東京市場で一時20年ぶりの1ドル=133円台)を招いたりしている。

帝国データの担当者は食品値上げについて、「これまでは主に食用油や小麦の上昇を反映していたが、春先以降の原油高や円安は一時的ではないと分かり、多くの食品企業は新たなコスト増分を小売価格に転嫁せざるを得なくなっている」と話す。

価格改定の食品分野別

加工食品

品目数 4288
値上げ率 14%
値上げの原因 小麦・油脂価格、食肉・魚類、包装資材
主な品目 カップラーメン、ハム・ソーセージ、冷凍食品

調味料

品目数 2153
値上げ率 11%
値上げの原因 油脂価格、包装資材、トマトなど野菜
主な品目 ドレッシング、マヨネーズ、ルー、香辛料

酒類・飲料

品目数 2263
値上げ率 15%
値上げの原因 小麦価格、PETボトルなど容器価格
主な品目 焼酎、チューハイ、ビール、発泡酒、炭酸飲料

菓子

品目数 722
値上げ率 12%
値上げの原因 小麦・油脂価格、ジャガイモ、砂糖、包装資材
主な品目 スナック菓子、チョコ菓子、アイスクリーム

パン

品目数 454
値上げ率 9%
値上げの原因 小麦価格、包装資材
主な品目 食パン、菓子パン、業務用パン

出典:帝国データバンク

原油価格の上昇は輸送費や包装資材費を押し上げるほか、円安は輸入品全般に価格上昇要因となる。このため、値上げは特定品目に限らず、広がりを見せている。4月の全国消費者物価指数(価格変動の大きい生鮮食品を除く)は前年同月比2.1%上昇し、約7年ぶりに2%台に乗せたほか、同月の毎月勤労統計調査によると、物価上昇を加味した実質賃金は前年同月比1.2%減少した。

こうしたなか、日本銀行の黒田東彦総裁は講演で、「家計の値上げ許容度も高まってきている」などと述べ、ネット上などで波紋を広げている。

バナー写真:PIXTA

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