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不正薬物密輸の「運び屋」急増: 2023年上半期は133件摘発、前年同期比6倍に―財務省まとめ

社会

コロナ水際対策の緩和を背景に、不正薬物を国際線旅客機に持ち込む「運び屋」による密輸事件が急増している。

財務省関税局がこのほど発表した関税法違反取締実績によると、2023年上半期(1月-6月)に全国の税関が空港や港湾で摘発した不正薬物の摘発件数は472件で、前年同期比8%減。ただし、不正薬物を旅客機に持ち込む「運び屋」による事件は133件に上り、前年同期(21件)に比べ6倍以上に跳ね上がった。

また、旅客機による金地金の密輸事件も急増。22年上半期には摘発ゼロだったが、今期は120件となった。財務省は水際対策の緩和により、観光客を装った「運び屋」が増え、密輸リスクが高まっているとして警戒を強化している。

航空機旅客による密輸摘発件数の推移

コロナ前の2019年、不正薬物の摘発総数は1年間で1047件。形態別でみると、うち航空機旅客による「運び屋」が約4割、国際郵便物を利用した密輸が約半数、商業貨物利用が1割を占めていた。「運び屋」の摘発割合は、21年は約5%、22年は約10%と大きく低下していたが、23年上半期は全体の約30%に上昇している。

摘発による全体の不正薬物の押収量は、23年上半期は675キログラム。前年同期比6%増えた。特に覚醒剤の押収量が大きく増加。前年同期比の3.1倍にあたる591キログラムに達した。同省によると、この押収量は薬物乱用者の通常使用量で約1970万回分、末端価格で367億円に上るという。

コカイン、MDMAなどの麻薬の押収量は、前年同期比2倍となる70キロだった。しかし、コロナ禍以前に比べると、覚醒剤、麻薬ともに押収量は減少傾向。23年の通年で増加傾向に転じるかが注目される。

覚醒剤と麻薬の摘発実績推移

バナー写真:福岡県警が押収した覚醒剤など=2023年2月27日、福岡空港税関支署(共同)

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