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東日本大震災から14年:被災地と福島第1原発の現状

社会 防災

2011年の東日本大震災発生から3月11日で 14年。被災地と福島第1原発をめぐる、この一年の新たな動きをまとめた。

核燃料デブリを初めて取り出し

東京電力は2024年11月、福島第1原子力発電所2号機の溶融核燃料(デブリ)の試験取り出しに成功したと発表した。重さは約0.7グラム。震災から13年半で、デブリの取り出しはこれが初めて。日本原子力研究開発機構(JAEA)の研究所に運ばれ、成分を分析する。

試験取り出しは21年中に始める予定だったが、機材開発の遅れなどで実施が遅れた。デブリは1〜3号機におよそ880トンあるとされ、今回採取したデブリの分析結果などを参考に、今後の大規模な回収方法の検討を進める。

回収装置で取り出され、専用容器に収納されるデブリ(東京電力提供、時事)
回収装置で取り出され、専用容器に収納されるデブリ(東京電力提供、時事)

原発「処理水」放出を継続

福島第1原発から出た「処理水」(核燃料の冷却などに使った汚染水の放射性物質をろ過プロセスで取り除き、除去が難しいトリチウムなどが一部残存している水)の海洋放出は24年度も続き、東京電力によると、24年11月5日現在、23年度からの放出量の累計は7万8285トン。処理水の放出に伴って保管用タンクの一部が空になり、東電は25年2月に解体作業を始めた。

解体される処理水貯蔵タンク=2025年2月14日午前、東京電力福島第1原発構内[同社提供](時事)
解体される処理水貯蔵タンク=2025年2月14日午前、東京電力福島第1原発構内[同社提供](時事)

汚染水は今も原発内で毎日新たに発生し、多核種除去設備(ALPS)による浄化処理も続いている。処理水放出は今後少なくとも20年前後は続く見通しで、汚染水の発生量そのものを抑制する効果的な対策が求められている。

日中両政府は24年9月、中国が国際原子力機関(IAEA)のモニタリング(監視)枠組みに参加することで合意。今後中国の研究機関が安全性を確認すれば、日本の水産物輸入を段階的に再開する可能性が出てきた。

「特定帰還居住地域」での除染続く

東京電力福島第1原発事故による放射線物質の放出・拡散により、原発周辺の7市町村の一部が現在も避難指示区域(帰還困難地域)に指定されている。

政府は帰還困難地域のうち、6町村で優先的に除染を進める「特定復興再生拠点区域(復興拠点)」で、2022年6月から順次避難指示を解除し、23年5月にはすべての復興拠点が解除された。復興拠点ではインフラ整備が進む一方、避難先から帰還する住民は今のところわずかな数にとどまっている。

住民帰還が最も遅れた(22年8月に一部避難指示解除)双葉町では24年5月、相馬野馬追(のまおい)に出陣した騎馬武者ら凱旋(がいせん)する「帰り馬行列」が14年ぶりに行われた。

23年6月の法改正に伴い、政府は復興拠点外の帰還困難区域でも避難指示解除が可能となる「特定帰還居住地域」を新設。大熊町、双葉町、浪江町、富岡町で計画が認定され、除染作業が始まっている。

福島県の避難指示区域(2025年2月末時点)

政府は24年12月、東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た土壌の再生利用や処分の具体化に向けた全閣僚会議を設置。法律に定められている45年3月までの除染土壌の福島県外最終処分の実現に向け、基本方針を25年春までに策定する。

原発集団訴訟などの動き

2024年12月、東京電力福島第1原発事故で京都府に避難した166人が国と東電に賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は両者の賠償責任を認めた一審の京都地裁判決を変更して国の責任を否定し、東電にのみ1億円余りの賠償を命じた。一連の避難者訴訟を巡っては、先行訴訟で最高裁が22年に国の責任を否定して以降、それを踏襲する司法判断が続いている。

東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)2号機が24年10月、東日本大震災以来13年7カ月ぶりに再稼働した。同原発の重大事故に備えた避難計画には実効性がないとして、住民が運転の差し止めを求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は11月、訴えを退けた一審・仙台地裁判決を支持し、住民側の控訴を棄却した。

東日本大震災とは

2011年3月11日金曜日午後2時46分、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震が発生。宮城県北部の栗原市で最大震度7を観測したほか、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉の8県で震度6弱以上を観測した。その直後に福島県相馬市で9.3メートル以上、宮城県石巻市で8.6メートル以上、岩手県宮古市では8.5メートルの高さとなる大規模な津波が広範囲にわたって沿岸部に押し寄せた。発災直後の避難者は約47万人。仮設住宅などの入居は最大で約12万4000戸に及んだ。

政府が把握した人的被害は、震災発生から3カ月余りの6月20日時点で、死者約1万5000人、行方不明者約7500人、負傷者約5440人に達した。

復興庁によると、災害関連死を含めてこれまでの死者は1万9775人、行方不明者は2550人、全壊した住家被害は12万2050棟。24年11月現在、今も約2万9000人余りが避難生活をしている。

避難者数の推移

バナー写真:14年ぶりに復活した福島県双葉町の騎馬武者行列=2024年5月26日、福島県双葉町(時事)

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