対米自動車輸出に急ブレーキ:トランプ関税の悪影響じわり
経済・ビジネス 政治・外交
トランプ関税の影響で、日本の対米自動車輸出に急ブレーキがかかり始めた。自動車業界は高関税に対し、値下げで対応しているとみられ、業界全体の収益に大きな影響が出てくるとの試算もある。
- English
- 日本語
- 简体字
- 繁體字
- Français
- Español
- العربية
- Русский
トランプ米政権は国別の相互関税のほか、自動車(4月~)には25%の追加関税を課している。日本政府は高関税の撤廃に向けて、米国と交渉しているが、6月の日米首脳会談でも合意には至らなかった。トランプ大統領は自動車関税のさらなる引き上げも示唆している。
財務省の貿易統計によると、関税引き上げから2カ月目の5月、対米自動車輸出額は3634億円と、1年4カ月ぶりの低水準となった。前年同月比では24.7%減り、減少幅は4月(4.8%)を大きく上回った。輸出台数の落ち込みは同3.9%減にとどまっているのに対して、単価は同21.7%も低下した。
4月以降、円相場は比較的落ち着いていたため、単価が下がったのは為替要因ではない。日本の自動車メーカーが高関税に対して、「値下げすることによって関税コストを一定程度吸収している」(ニッセイ基礎研究所)とみられる。
同研究所の試算によると、仮に高関税への対応で対米輸出価格が10%低下し続けた場合、2025年度の自動車業界の経常利益は1.3兆円も減少する見通し。値下げしないで輸出数量が減る場合よりも影響が大きいという。同研究所経済調査部長の斎藤太郎氏は「値下げしても原材料など変動費は下がらないので、収益の圧迫要因は大きくなる」と指摘している。
トランプ関税の自動車業界への影響(前年度比)
数量10%減の場合
- 経常利益:0.2兆円減
- 変動費率:変わらず
価格10%減の場合
- 経常利益:1.3兆円減
- 変動費率:1.2%上昇
※変動費率とは売上高に占める変動費の割合 出典:ニッセイ基礎研究所の試算
【資料】
- 財務省「貿易統計」
- ニッセイ基礎研究所「トランプ関税による企業収益への影響」
バナー写真:PIXTA
