意外に知らない「ニッポン入門」

日本のマスク

暮らし 社会

新たな感染症が流行すると世界的にマスクの需要が増える。一方で毎冬多くの日本人がマスクで顔を覆う姿は、外国人には警戒感を与え、奇異に映るようだ。ただそれは風邪などをうつして「他人に迷惑をかけない」という文化の表れだ。

うつさない・うつされないためのマスク

日本ではここ数年、急激にマスク着用者が増えている。2018年度のマスク国内生産と輸入枚数の合計は、約55.38億枚。1918年のスペイン風邪がきっかけで広まったマスクは、風邪、花粉症、インフルエンザ、防塵、放射性物質対策、と今や予防衛生の必須アイテムになりつつある。また、世界に目を向けても新型肺炎、PM2.5問題、MERS感染症、エボラウイルス、バイクの粉塵公害予防とマスクの需要は増える一方だ。

マーケティング・コンサルタントの富士経済によると、家庭用マスクの売上は2018年で358億円。販売枚数が激増したのは、新型インフルエンザが猛威を振るった2009年。春先になると花粉症対策としてマスクを身に付ける人が増え、夏はエアコンで乾燥したオフィスでぬれマスクを着用する人もいる。コンビニやドラッグストアでは通年、4〜5種類のマスクが置いてある。

欧米では、マスクをすると感情が分かりにくいため「重い感染症にかかっているのではないか」「強盗ではないか」などと周囲から警戒され勘違いされることもあるため、病気の時でもマスクをする習慣がないという。

小林製薬の調査結果によると、風邪やインフルエンザの症状があったり、気になったりするときにほぼ毎日マスクを使用する日本人の割合は2008年が18%だったのに対し、2011年には30.6%と増加。ソフト・ブレーン・フィールド社が行った「使い捨てマスクに関するアンケート」では、「風邪・インフルエンザの予防」「風邪・インフルエンザにかかっている時」「花粉症対策」の順にマスク利用の理由が多かった。

「他人に迷惑をかけること」に対してより厳しい日本では、病気を「うつされない・うつさないためにマスクをする」のが、社会のマナーとなっている。

お洒落や表情隠しのためにする「だてマスク」

さらに近頃では「表情を隠す」という理由で日常的にマスクをする若者が増えている。10〜20代の女性を対象にoriconMEが行ったアンケートによると、3人に一人が「顔を隠すためにマスクをした経験がある」と答えた。「だてマスク」をする理由としては「メイクをしなくてすんで楽」「すっぴんを見られたくない」などが上位にランクイン。また、人付き合いが苦手な若者が、表情を隠して周りの人から話しかけられないようにするためマスクをするという傾向も高い。

こうしたブームを受け、女子用にカラフルなデザインものや小顔効果のあるマスクが登場。黒いマスクは、男性を中心にダークカラーファッションやライフスタイルに合わせやすいと人気が高い。

「マカロンレースマスク」写真提供:おしゃれマスク専門店 エストクチュール
「マカロンレースマスク」写真提供:おしゃれマスク専門店 エストクチュール

サイズも種類も豊富なマスク

最近の予防用マスクの主流は、フィルターに不織布を使ったものなど最新技術を応用したハイテクマスクだ。プリーツ加工や顔にフィットするように立体加工されたマスクは、ウイルスの侵入を防止したり、ぬれフィルターでスチーム効果のあるうるおいマスクや、メガネがくもらないもの、メイクが落ちにくいものなど種類もサイズも豊富だ。

2015年春、フィギュアスケートのソチオリンピック金メダリスト・羽生結弦選手が、100回洗って使える9層フィルター入りの高性能マスクを着用して上海空港に降り立ち、メディアの注目を集めた。このマスクを製造した「くればぁ」は、エボラウイルスの粒子を食い止め、ウイルスが付着した場合でも99%殺菌できる高性能マスクを製造し、1万枚をアフリカに寄贈した。

「くればぁ」(愛知県)が、急ピッチでエボラ対策マスクを生産 ©時事
「くればぁ」(愛知県)が、急ピッチでエボラ対策マスクを生産(時事)

社会問題にもなっているPM2.5は、通常の家庭用マスクでは、微小粒子状物質が通り抜けてしまい、肺がん等、呼吸系、循環器系への悪影響を及ぼす。PM2.5は粒子が、2.5マイクロメートル以下と小さく、日本規格「DS2」か、米国規格「N95」以上の規格に合格した医療用・産業用マスクでないと防ぐことができない。

ぴったりフィットが何より大切!

しかし、どんなに高価で高性能マスクを使っても、上下や裏表を間違えたり、顔のサイズに合わせてぴったり装着しないと、効き目は発揮されない。サイズは、1歳半用から用意されている。多種多様な用途に使えるマスク。家族それぞれの顔の大きさと目的にあったものを見つけてリスクマネージメントとして常備しておきたい。

バナー写真= 3月上旬、スギ花粉のピークにマスクをつけて銀座を歩く人々(時事通信フォト)

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