禅の言葉に耳を傾ける

禅の言葉8 無常迅速

文化

コロナ禍に明け暮れた2020年も終わろうとしている。1年を振り返ってみると、まさに「光陰矢の如(ごと)し」。あっという間に過ぎ去ってしまったような気がする。だからこそ、新しい年はかけがえのない時間を大切にしたい。禅の言葉シリーズ第8回は、「無常迅速」。

【無常迅速(むじょうじんそく)】

時間が止まることなく、あっという間に過ぎてゆくことを表す言葉。そのため歳月は人を待たず、人の死は思いがけず早く訪れる。だからこそ今生きていることに感謝し、かけがえのない時間を大切にして生きよという教え。

登場人物

典子: わがままな中学生
おばあちゃん: 典子の祖母
お父さん: 典子の父
お母さん: 典子の母

典子・お父さん・お母さん「70歳おめでとう、おばあちゃん!」
典子・お父さん・お母さん「70歳おめでとう、おばあちゃん!」

お父さん「おばあちゃん、どうしても欲しいプレゼントがあるんだって?」
おばあちゃん「ええ、実はね……」
お父さん「おばあちゃん、どうしても欲しいプレゼントがあるんだって?」
おばあちゃん「ええ、実はね……」

おばあちゃん「……私、中学生になりたいの」
3人「ええっ!?」
おばあちゃん「……私、中学生になりたいの」
3人「ええっ!?」

お父さん「〇〇中学校夜間部 勉強したい人は誰でもどうぞ! 月曜〜金曜17:30〜21:00 電話: 03-xxxx-xxxx」
お父さん「〇〇中学校夜間部 勉強したい人は誰でもどうぞ! 月曜〜金曜17:30〜21:00 電話: 03-xxxx-xxxx」

お父さん「うーん、ずいぶん遅い時間だな」典子「しかもこれ、私の学校だわ! やめてよ、友だちもいるのに」
お父さん「うーん、ずいぶん遅い時間だな」
典子「しかもこれ、私の学校だわ! やめてよ、友だちもいるのに」

お母さん「でも、おばあちゃん。70歳の、どうしても欲しいプレゼントなんですよね?」
おばあちゃん「ありがとう。実はこの前、テレビを見てね……」
お母さん「でも、おばあちゃん。70歳の、どうしても欲しいプレゼントなんですよね?」
おばあちゃん「ありがとう。実はこの前、テレビを見てね……」

おばあちゃん「外国の画家のおじいさん。今80歳なんだけどね、絵を始めたの、70歳からですって! どうしても描きたかったのに、それまで忙しくて時間がなかったんだって」
おばあちゃん「外国の画家のおじいさん。今80歳なんだけどね、絵を始めたの、70歳からですって! どうしても描きたかったのに、それまで忙しくて時間がなかったんだって」

おばあちゃん「それを見て思ったの。私、学校にも行けないまま、あっという間にこの年まで来てしまったけど……」
おばあちゃん「それを見て思ったの。私、学校にも行けないまま、あっという間にこの年まで来てしまったけど……」

おばあちゃん「遅すぎるなんてことはないのよ。これからうんとたくさんのことを知りたいし、算数も英語もできるようになりたいわ」
おばあちゃん「遅すぎるなんてことはないのよ。これからうんとたくさんのことを知りたいし、英語も数学もできるようになりたいわ」

お母さん「おばあちゃん、これからは自分の時間を大事にしてね」
典子「そうだね、おばあちゃんの人生だもんね」
お父さん「じゃ、帰りは僕が迎えに行こう」
お母さん「おばあちゃん、これからは自分の時間を大事にしてね」
典子「そうだね、おばあちゃんの人生だもんね」
お父さん「じゃ、帰りは僕が迎えに行こう」

典子「その1年後……」
典子「その1年後……」

おばあちゃん「よし、英作文終わり」
典子「おばあちゃん、たくさん書いたねー」
おばあちゃん「よし、英作文終わり」
典子「おばあちゃん、たくさん書いたねー」

おばあちゃん「やっぱり、いろんなことができるようになるって楽しいわねえ」
典子「人生エンジョイしてるね! で、何を書いたの?」
おばあちゃん「やっぱり、いろんなことができるようになるって楽しいわねえ」
典子「人生エンジョイしてるね! で、何を書いたの?」

おばあちゃん「あの外国の画家のおじいさんとね、英語で文通してるの…」
おばあちゃん「あの外国の画家のおじいさんとね、英語で文通してるの…」

おわり

漫画:モクタン・アンジェロ
協力:大空山磨塼寺(たいくうざんませんじ) 藤田一照住職

漫画 禅の言葉