新薬師寺 十二神将立像:六田知弘の古仏巡礼
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静寂な新薬師寺(奈良市)の本堂。足を一歩踏み入れると、甲冑(かっちゅう)に身を固めた怒りの表情の仏像たちが出迎えてくれる。本尊・薬師如来像(国宝)を囲むようにして立ち並ぶ十二神将像である。
十二神将は、『薬師経』を信仰する者を守るという、薬師如来の眷属(けんぞく=従者)である。実際には12体しか見えないが、それぞれの神将に7000人の兵がいると言われているので、合計で8万4000人もの大軍団が勢ぞろいしていることになる。そう思って薬師如来の周囲を歩いてみると、その気迫に圧倒されるのではないか。
本像は土や粘土をこねて固めた塑造(そぞう)という技法で作られている。天平時代に中国の唐からもたらされた仏像制作法で、骨格となる心木に荒縄を巻き、その上に粘土を3層に盛って成型していく。飛鳥・白鳳時代の一木を彫る木造仏や鋳造する金銅仏とは違い、粘土の特性を活かしリアルな表情、躍動するフォルムを表現できる。一体ずつ向き合うと、それぞれのキャラの違いが伝わってきて興味深い。
新薬師寺の十二神将像は、日本最古、かつ最大級の十二神将像と言われている。ただし江戸時代に書かれた『新薬師寺縁起』によると、奈良時代に大寺院だった岩淵寺(廃寺)から移されたと記されており、その出自については謎も残る。
以下、本堂に安置された十二神将を、伐折羅(バザラ)大将からスタートして逆時計回りに紹介しよう。ただし寺院では時計回りに拝観するのが一般的なので、この逆になる。

伐折羅(バザラ)大将

頞你羅(アニラ)大将

波夷羅(ハイラ)大将

昆羯羅(ビギャラ)大将

摩虎羅(マコラ)大将

宮毘羅(クビラ)大将

招杜羅(ショウトラ)大将

真達羅(シンダラ)大将

珊底羅(サンテラ)大将

迷企羅(メイキラ)大将

安底羅(アンテラ)大将

因達羅(インダラ)大将
写真家の六田知弘は、「薬師如来を中心にぐるりと円形に立ち並ぶ12体のエネルギーあふれる神将像を順々に撮影していくうちに、それぞれの神将が、宇宙の中心におわす仏が全方向に向けて放つオーラの化身のように思えてきた」と語る。おそらく拝観者も同じで、そうしたオーラを感じながら、この濃密な空間にいつまでもとどまっていたいと思うだろう。

十二支は中国の十二宮に獣を当てたのに基づく暦法で、十二獣をそれぞれの時刻および方角に割り当てた。中国に仏教が伝わってから、インド起源の十二神将が中国起源の十二支と結びつくようになった。日本では鎌倉時代から、十二神将像の頭部に十二支の動物をつけて、干支の守護神として信仰されるようになった。本像は天平時代作なので、十二支を意識して制作されているわけではない。時代が下り十二支信仰が広まってから、新薬師寺でも十二支と対応させるようになった。以下、十二神将の面々を十二支の順に並び替えて紹介する。

子(ね:鼠=ネズミ) 昆羯羅(ビギャラ)大将 国宝(指定名:毘羯羅)

丑(うし:牛) 招杜羅(ショウトラ)大将 国宝(指定名:珊底羅)

寅(とら:虎) 真達羅(シンダラ)大将 国宝(指定名:真達羅)

卯(う:兎=うさぎ) 摩虎羅(マコラ)大将 国宝(指定名:摩虎羅)

辰(たつ:竜)波夷羅(ハイラ)大将 1931年の補作(指定名:宮毘羅)

巳(み:蛇) 因達羅(インダラ)大将 国宝(指定名:波夷羅)

午(うま:馬) 珊底羅(サンテラ)大将 国宝(指定名:安底羅)

未(ひつじ:羊) 頞你羅(アニラ)大将 国宝(指定名:頞你羅)

申(さる:猿) 安底羅(アンテラ)大将 国宝(指定名:伐折羅)

酉(とり:鶏) 迷企羅(メイキラ)国宝(指定名:因達羅)

戌(いぬ:犬) 伐折羅(バザラ)大将 国宝(指定名:迷企羅)

亥(い:猪) 宮毘羅(クビラ)大将 国宝(指定名:招杜羅)
新たな年に願いを込めて、それぞれの生まれ年の神将像にお参りに訪れる人たちを、十二神将像は優しく迎えてくれるはずだ。
2026年の干支は午。左手を腰に当て、右手で矛を持つ珊底羅大将が、午年の守護神とされる。今年1年、きっと私たちを災厄から守ってくれると信じて手を合わせたい。

2026年の守護神、珊底羅(サンテラ)大将
十二神将立像
- 読み:じゅうにしんしょうりゅうぞう
- 像高:1.52~1.66メートル
- 時代:奈良時代(天平時代)
- 所蔵:新薬師寺
- 指定:国宝(指定名:塑造十二神将立像、波夷羅(ハイラ)大将を除く)
バナー写真:十二神将立像と薬師如来坐(ざ)像 撮影:六田 知弘