新薬師寺 薬師如来坐像:六田知弘の古仏巡礼
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十二神将に囲まれた円陣の中央で圧倒的なオーラを放つ、新薬師寺の本尊・薬師如来だ。新薬師寺は光明皇后が聖武天皇の病気平癒のために747(天平19)年に建立した寺院で、同像は8世紀末、平安初期に制作された。

ふくよかな体格で安定感がある。丸々とした顔にはギョロとした大きな目が刻まれ、膨らませた鼻翼や分厚い唇など、若々しくはつらつとした印象を与える。

左手に薬壺(やっこ)を持ち、右手は衆生の畏(おそ)れる心を取り除く「施無畏印(せむいいん)」を結ぶ。ゆったりとくつろいだ雰囲気で、癒やしの仏らしい包容力を感じさせる。

頭と胴体は1本の太いカヤの木から彫り出された。手と足は同じカヤの木から切り出した木材をはぎ合わせ、全体の木目をそろえて、まるで一本から丸彫りしたように造られている。そのため1975年に文化庁によって修理・調査が行われるまで、一木を削って造像されたと考えられていた。
なぜこのような面倒なことをしたのか。それは霊験あらたかな薬師如来像を1本の霊木から彫り出したいという意思があったからだ。そこには巨木に精霊が宿るとする古代人の信仰があったに違いない。目や眉、ひげに墨を、唇に朱を施す以外、素地(そじ)で仕上げているのも神木の雰囲気をとどめたいと考えたからかもしれない。
華麗な光背には、小形の薬師如来坐像6体が取り付けられている。こちらはヒノキの一木造で、像高は40センチ程。本体と同じ指の形を結び、全体で経典に説く「七仏薬師」を表現している。

「顔も体も肉づきがよく量感あふれる本尊にレンズを向けた時、瞳の奥から怪異とも思えるほどの強力なエネルギーがこちらに向かって放射されてくるのを感じた」と写真家の六田知弘は語る。「しかし、しばらく見つめていると、そのむき出しのエネルギーは和らぎ、慈悲の光が私を優しく包み込んでくれた」

薬師如来坐像
- 読み:やくしにょらいざぞう
- 像髙:1.91メートル
- 時代:平安初期
- 所蔵:新薬師寺
- 指定:国宝(指定名:木造薬師如来坐像〈本堂安置〉)
バナー写真:薬師如来坐像 新薬師寺蔵 撮影:六田 知弘