【新刊紹介】出町譲著:現場発!ニッポン再興~ふるさとが「稼ぐまち」に変わる16の方法~

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日本は、人類史上経験のない人口減少に直面している。今世紀末、つまりあと80年ほどで、現在の1億2500万人強が半分以下の6000万人弱に縮んでしまうと推計される。「静かなる有事」を前にした現場発の再興論を著した。

特に地方で、きしみが聞こえる。人口が減れば、病院や学校、スーパーがなくなる。そして働く場所も。少子化で小学校や中学校が統合され、子育ても困難となる。地震や災害のように建物が壊れるわけではないが、“静かなる有事”である。

「人口増」を前提に国づくりを進めてきた霞が関や永田町に任せていても、解決法は見いだせないと、私は思う。国は過去50年近く、地方向けに100兆円近くを投じているが、事態は一向に改善しない。人口減、地方衰退は進むばかりである。

しかし、実は政府がもたもたしている間に、地方では現場が動き始めている。本書は、現場で人口減少を直視し、具体的な行動を起こした人たちを取り上げた。

「曲がる器」の富山・能作さん、「やねだん」の鹿児島・豊重さん、「オガール」の岩手・岡崎さん、「流しの公務員」の愛知・山田さん…。それぞれ現場や仕事は違うが、共通点がある。彼らは摩擦を恐れず、改革にまい進する。その戦いは、共感を呼び、周囲の人々を巻き込む。それが「奇跡」を生み出す。若い人がIターンしたり、閑古鳥が鳴いていた温泉街に観光客が殺到したり。そんな現場がいくつもあった。私はそれを見て、目頭が熱くなった。

単なる地域再生の事例集とは、受け取ってもらいたくない。「現場に解あり」。役所の縦割り仕事はもう通用しない。親の介護、子供の引きこもり、多重債務と地域にはさまざまな困りごとで悩む人がいる。縦割りではなく、現場に根差して総合的に対応する必要がある。その意味での「現場発のニッポン再興論」である。

現代史を振り返れば、日本は開国、敗戦と2度の危機に見舞われた。それを乗り越えたのは、「改革の志士」の存在だ。明治維新以降、近代化のために汗をかいたのは、渋沢栄一であり、浅野総一郎。戦後復興で焼け野原から立ち上がったのは、松下幸之助であり、土光敏夫である。彼らが旗振り役となり、人々を巻き込み、国が大きく変貌した。そして今、日本は人口減少という3度目の危機に襲われている。“静かなる有事”は、開国、敗戦に匹敵する深刻な問題である。本書で取り上げた人々は、「第三の危機」を克服するため、現れた志士だと、私は考える。

エコノミストの藻谷浩介さんは本書巻末の対談で、こんな感想を寄せてくれた。

「非常に感度の高い取材から生まれた、”温故知新”の粒ぞろいなんです。これだけ多岐のジャンルにわたって、質の高い事例をセレクトして、きちんと取材をして書かれた本は貴重です。時と場所を超えて残すべき、地方創生の記録といえるのではないでしょうか」。

国や行政に頼らず、それぞれの地域、会社で一歩踏み出す。それが日本を変える道だと考え、筆を執った。

現場発!ニッポン再興~ふるさとが「稼ぐまち」に変わる16の方法~

出町 譲(著)
発行:晶文社
289ページ
初版発行日:2019年4月30日
ISBN:978-4-7949-7082-4

少子高齢化 人口減少 地域再生 縦割り行政 藻谷浩介