【新刊紹介】劇的に改善した自然環境:石弘之著『環境再興史 よみがえる日本の自然』

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絶滅寸前の野鳥、公害によって汚染された海や空…。一度失いそうになった自然が信じられない程に回復している。環境問題に50年以上関わってきたジャーナリストがその再生の軌跡を追った。

著者がこよなく愛する野鳥たちが絶滅を免れた物語には、いくつもの波乱万丈のドラマがある。乱獲と生息地の消滅で33羽に激減、極めて危険な状態に追い込まれたタンチョウが、地元の保護活動が実り1800羽を超えるまでになった。しかし、数が増えたからと言って手放しに喜べない。繁殖地不足や農作物の食害など「増えすぎた悩み」を抱え、野生動物保護の在り方について考えさせられる。アホウドリ、ガン、トキなどの復活も紹介される。

水と大気の環境改善が、東京湾、多摩川、川崎市を舞台に語られる。もちろん全ての自然環境が元通りになった訳ではないし、新たな問題も起きている。しかし生活雑排水や工場からの廃液・有毒ガスによって瀕死(ひんし)の状態に陥った海や川、空が、確実に回復しつつあるのを感じ取ることができる。その再生ぶりには目を見張るものがあり、私たちの想像をはるかに超えている。

それにしても、なぜこうした環境破壊が引き起こされたのか。著者はその根本的な原因を追究していく。公共事業による乱開発、水俣病に代表される公害問題など、「環境」を犠牲にして「経済」を最優先させた当時の社会状況は、現代から見ると負の歴史そのものだ。

時代の流れを変える原動力となったのは、市民運動の盛り上がりだった。その動きに触発されて、自治体や政府、企業の意識も大きく変わっていく。「世界最悪の汚染国」と揶揄(やゆ)された日本が「公害防止先進国」と呼ばれるまでになった背景には、環境庁の創設や公害防止に関する法律の整備、企業による環境技術の開発などさまざまな取り組みがあった。

著者は30年以上前に、環境問題を考えるためのバイブル『地球環境報告』(岩波新書)を上梓(じょうし)した。そこには、80カ国以上を訪ねて集めた“地球の悲鳴”が記録されていた。それ以降も環境破壊の現場に赴き、その実情をつぶさに調査してきた。こうした経験を踏まえて書かれた本書には、後世に伝えたい貴重な教訓がちりばめられている。

発行:KADOKAWA
発行日:2019年9月10日
新書版313ページ
ISBN:978-4-04-082237-2 C0236

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