【新刊紹介】懐と心にやさしい飲み方:パリッコ著『つつまし酒』

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「お酒にまつわる、自分だけの、つつましくも幸せな時間」のエッセイ集だ。本書名のサブタイトル「懐と心にやさしい46の飲み方」が示すように、実に多くの楽しく、安く飲む方法が丹念に書かれている。

著者は、長年勤めていた会社を辞めて、お酒や酒場関係の執筆活動を続ける酒場ライター。もちろん日本人で男性41歳。

各エッセイの題名も面白い。「健康診断後のホッピー&カツカレー」「カプセルホテルで昼寝飲み」「チンチロリンハイボール」「冬のあったか野外酒」「噂の角打ちは酒のワンダーランドだった」「人気のロケ弁で飲む」。著者がこっそり、ひっそりと楽しんでいる情景が目に浮かぶ。

安いハンバーガーを買ってきて、スライスしたトマトやレタス、お好みのソースなどを挟んで少し豪華にする。これをつまみに飲むのも安くて、いけるらしい。

有名な酒場についても書かれている。「ハシゴ酒天国『新橋駅前ビル』」は特に詳しく描かれている。戦後、都内最大とも言われた闇市の跡に、当時の飲み屋街のお店を詰め込んで建てられたのがこのビルだ。無数の飲み屋と飲食店がひしめき、今も闇市の面影が残り、酔客たちを昭和の時代にタイムスリップした気分にさせてしまう。ビーフンが名物の中華店は、かの人気作家も愛した店とか。

「(つつまし酒の時間は)はたから見れば、みすぼらしかったり、くだらなかったり、取るに足らないものであるかもしれない。けれど、人生を少しだけ豊かにしてくれ、明日を生きる活力につながっていく」と著者は言う。

読むだけで、自分も「つつまし酒」を楽しんだ気になってしまう本である。

光文社新書
発行日:2019年12月30日
323ページ
価格:900円(税抜き)
ISBN: 978-4-334-04447-3

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