【新刊紹介】中国の最新技術のリアル:西谷格著『ルポ デジタルチャイナ体験記』

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新型コロナウイルスのまん延で忘れられているが、中国は今やIT(情報技術)先進国と言っても過言ではない。スマホを使ったキャッシュレス決済や無人書店、顔認証を多用したアリババのホテルなど、日本にはないサービスが、近年続々と誕生している。

中国の巨大IT企業アリババが作ったホテルでは、チェックインカウンターが無人で、顔認証で客室のドアが開く。室内にはAIスピーカーが置かれ、ミネラルウォーターやシャンプーなどはロボットが届けてくれる。

これまで個人のツイッターやブログなどで断片的に知られていた情報もあるが、実際に現地で商品やサービスを網羅的に取材し、書籍としてまとめたものは本書が初めてではないだろうか。著者が実際にその場に行って使ってみたという実体験に基づいて書かれており、現地のリアルな状況が理解できる。

日本より進んでいる面がある一方、時には見切り発車で次々と新サービスを打ち出すゆえに、見掛け倒しの”ハリボテ”のようなものもある。興味深いのは、制度設計の根底にある考え方。シェアリング傘では、壊したりなくしたりすることを前提にデポジットを払う仕組みになっていて、借りっぱなしにしていると自動的にデポジットが没収される。性悪説に基づいているからこそ、使い勝手が増しているとも言える。

キャッシュレス決済が普及することで、デッドスペースを使ったビジネスも盛んになった。少人数で使える無人カラオケボックスや、1人用の無人ランニングマシン、無人休憩ボックスなどの新ビジネスが誕生した。

このほか、店内にベルトコンベアが張りめぐらされたネットスーパーや、レストランの番号待ちアプリ、ロッカーを使って受け渡しをする無人スターバックスなどの事例は、5G時代の新たなサービスを考えるヒントにもなりそうだ。(ニッポンドットコム編集部)

PHPビジネス新書
発行日:2020年2月28日
新書版206ページ
価格:830円(税別)
ISBN:978-4-569-84582-1

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