【新刊紹介】元電通マンの大学奮闘記:横山陽二著『企業人から大学教員になりたいあなたへ』

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大手広告会社勤めから大学教員に転身した著者の奮闘記。優雅に研究室で自分の研究や読書、というのは昔の大学の先生のことで、講義の出勤日はかなり忙しく、やりがいがあるという。

大学教員に魅力を感じている企業人は少なくないようだ。著者は「どうしたら大学教授になれるのか」などと聞かれることがよくあり、本書の執筆を思い立った。

広告会社の東京本社で政府の政策広報や観光立国などの周知に携わっていた時、かつて勤務した名古屋支社時代の知り合いの大学職員から、新設学部での現代広告論の非常勤講師を打診された。

仕事がない週末に広告関連の本を読んだり、多くのセミナーを聴講したりして、講義録を作成。満を持して、夏の3日間、12回の集中講義に臨んだが、想像以上の重労働だった。会社では社員たちが分業でプロジェクトを組み上げていくが、大学教員の講義はすべて自分一人で行わなければならないのだ。

でも、講義内容についての学生アンケートが好評で、大学教員の醍醐味を味わい、集中講義を6年続けた。やがて、新設学部の専任教員の話があり、20年勤めた会社を退社して、准教授となった。授業の準備、学生対応などに追われる日々は、広告マン時代にクライアントの要望に応えるための仕事に追われた忙しさとは違うやりがいがある。

多くの教員は学園出身者で企業についての知識がほとんどないので、大学には企業出身者が欠かせないことを、著者は感じていく。学生の就職活動でも、企業出身の教員がいれば、キャリアを生かして十分に活躍でき、学生たちを助けるはずだと。企業出身者の教育活動が大学の新しい活力になり、学生にとっても有意義なことは間違いない。

著者は給与が以前の半分になったという。「あの会社を退職するなんて、もったいない」と知人や友人に言われたこともあったが、「専任教員の活動は、会社社員では経験できないものだし、自身の視野を広めることができたので、後悔はしていない」。

本書は大学への転職を考えている人への“参考書”にとどまらず、今日の大学教育を理解するのにも役立つ内容になっている。

発行 ゆいぽおと
発行日:2020年4月24日
222ページ
価格:1500円(税別)
ISBN:978-4-87758-486-3

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