【新刊紹介】コロナ時代をどう生き抜くか:姜尚中著『生きるコツ』

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マスメディアでも活躍した政治学者が古希を迎えた。「コロナ時代」をどう生き抜くか。また、自分の知らない自分に出会える「老いてなお興味津々」の日々、妻と過ごす軽井沢の高原での生活を綴った。

「コロナ」の感染者が見つかった初期の段階、日本人の多くは「オリンピックも安全も、景気も」すべて何とかしたいと思っていた。しかし、時間の経過とともに楽観的な雰囲気は消えた。

「政府も企業も個人も、『あれもこれも』のいいとこ取りの構えを捨てて、『あれかこれか』の二者択一しかないことを肝に銘じて、苦境に立ち向かうこと」

コロナ時代の不確実な世界を生き抜くキーワードは「無心」。落ち着いて、静かな覚悟だという。姜さんらしい直言が続く。

東京には、働く場所から、エンタテインメント、ショッピング、教育機関、人との出会いまで何でもある。しかし、コロナ禍が完全に収束しなければ、東京の優位性は逆にリスクとなる。「3密」によって成り立つ都市空間こそ、ウイルスには最適な場所だからだ。「東京脱出」を試みる人はますます増えるだろう。

姜さんは還暦になって自動車の運転免許を取り、真夜中の首都高をドライブすることも。毛嫌いしていたゴルフにも挑戦し、最近では「孤独のゴルフ」で心を癒すようになった。

「自分にはこんなところがあるのか、と知らない自分を発見して驚く。まるで未知との遭遇のような、静かな感動を与えてくれる」

「まだまだ、やりたいことはたくさんある。人生はわからない。いや、本人にもわからないからこそ、面白いのかもしれない」

首都圏の住み慣れた場所を引き払い、2013年から長野県の軽井沢の高原にある中古の家に移り住んだ。終の住処になる予感がしている。知り合って半世紀になる妻と、森の小道を歩き、菜園で農作業もする。いろいろなことがあったが、二人は今、高原の中で至福のひと時を過ごしている。

コロナ禍で、大都市から郊外やその周辺に目を向ける人が増えてきた昨今、それまで流行に少し遅れ気味だった姜夫妻は、皮肉にも時代の先取りをしていたのだった。

毎日新聞出版
発行日:2020年11月30日
205ページ
価格:1000円(税別)
ISBN:978-4-620-32655-9

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