【新刊紹介】「コロナ」から米ロ大統領、菅首相まで:名越健郎著『ジョークで読む世界ウラ事情』

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世界の最新政治ジョークの小話(アネクドート)を満載した、クスリと笑える本である。ネタは「新型コロナ」から、米ロ大統領、そして日本からも現首相らが登場する。

本書の面白さを理解してもらうため、収録の小話をたっぷり引用させていただく。

新型コロナウイルスが1年以上収まらないことに、高齢の米国人が驚いた。
「『Made in China』は通常、半年でだめになるが…」

イギリスで新型コロナウイルスの変異株が発見されると、中国政府がイギリス政府に抗議した。
「著作権侵害だ」

多くの犠牲者を出した「コロナ」を、ジョークのネタにするのは不謹慎だが、ステイホームを強いられ、欲求不満が高まる多くの人々はジョークで憂さを晴らしている。欧米やロシアのジョーク・サイトでは「中国・武漢コウモリ主犯説」を前提に、新作が次々にアップされている。

問 国際テロ組織のアルカイダとコウモリの共通点は何か?
答 ともに暗い洞穴に潜伏し、米本土攻撃に成功した。

個性の強かったトランプ大統領が小話の格好なネタになったのは言うまでもない。2020年の大統領選でも、米国テレビのナイトショーの政治ジョークでトランプ氏を揶揄(やゆ)するものが97%、バイデン氏は3%で地味なキャラクターを示した。

初代のワシントン大統領は、嘘をつくことができなかった。
ニクソン大統領は、真実を語ることができなかった。
トランプ大統領は、嘘と真実を区別することができなかった。

退任したトランプ氏がフロリダからバイデン大統領に電話をかけてきた。
バイデン大統領が何か話すと、トランプ氏が言った。
「Pardon me」

最後の「Pardon me」は、「もう一度言ってくれ」と、「恩赦を与えて」を引っ掛けている。

ロシアはジョークの先進国で、小話「アネクドート」の語源はギリシャ語の「アネクドトス(地下出版)」から来ている。抑圧された庶民がこの小話で不満を晴らしてきた。ロシアネタの中心は、もちろん長期政権を続けるプーチン大統領。

問 プーチン大統領はいつ退陣するか?
答 戴冠式の日だ

新しい国王・皇帝に王冠をかぶせる儀式が戴冠(たいかん)式である。

最後に日本ネタを一つ。

バイデン大統領が補佐官と、日米関係について話し合った。
「スガとかアベとかノダとかカンとか私にも覚えやすい名前が多いのはよかった」
「早期交代に備えて、外国人向けにシンプルな名前を選ぶようです」

元通信社記者の著者はモスクワ支局など海外取材の経験が豊富で、現在は大学の海外事情研究所教授。小話の前にある簡潔な解説も、最新の国際政治を理解するのに大変役立つ。愉快に世界情勢を学びたい方には、お薦めの1冊である。

発行:日経BP 日本経済新聞出版本部
発行日:2021年5月7日
200ページ
価格:990円(税込み)
ISBN:978-4-532-26461-1

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