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髙石あかり&伊澤彩織「バイトが苦手」な殺し屋コンビを熱演 映画『ベイビーわるきゅーれ』

Cinema エンタメ

女子高生の殺し屋コンビが暴れ回る異色のアクション映画『ベイビーわるきゅーれ』。主演は、舞台『鬼滅の刃』の禰豆子役で注目の若手女優、髙石あかりと、スタントウーマンとしてメジャー作品出演が相次ぐ新時代のアクションスター、伊澤彩織だ。エンタメ界に新風を吹き込む2人に、撮影の思い出や作品の見どころを語ってもらった。

映画『ベイビーわるきゅーれ』は、大学在学中に自主映画で頭角を現し、2018年に『ファミリー☆ウォーズ』で商業映画デビューを果たした阪元裕吾監督の新作。女子高生2人が組織から雇われた殺し屋であるという奇抜な設定から、コミカルなやり取りと、壮絶なバイオレンス・アクションが繰り広げられる。

映画『ベイビーわるきゅーれ』のちさと(髙石あかり、左)とまひろ(伊澤彩織) ©2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会
映画『ベイビーわるきゅーれ』のちさと(髙石あかり、左)とまひろ(伊澤彩織) ©2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会

主人公は、高校卒業を間近に控えた「ちさと」と「まひろ」。社会に適合できない2人は、進学するつもりもなく、アルバイトも長続きしない。組織からは、殺し屋稼業を続けながら、社会人として自立するよう求められて悩む。仕方なくメイド喫茶の仕事を始めた2人。初日でくじけたまひろ(伊澤彩織)を置いて出勤したちさと(髙石あかり)は、店に現れたヤクザが起こすトラブルに巻き込まれてしまう。ヤクザを撃退したちさとは、まひろを連れて凶暴な集団と決死の対決に向かう…。

メイド喫茶のアルバイトに挑戦する2人 ©2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会
メイド喫茶のアルバイトに挑戦する2人 ©2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会

「女子高生殺し屋コンビ」が生まれたきっかけ

ちさと役の髙石あかりは2002年生まれの18歳。エイベックス主催のキッズコンテストを通じて12歳で芸能界入りし、ダンスボーカルユニットに在籍した後、2019年から本格的に女優として活動する。

髙石あかり これまでは舞台の仕事が多くて、こうやって映画に出させてもらえるというだけで大きなことなんですけど、まさか主役をやらせていただけるとは思っていなくて…。ただ、『ある用務員』という作品で阪元監督と伊澤さんに出会っていたおかげで、変にプレッシャーや緊張を感じることはなかったです。その空気感を『ベイビーわるきゅーれ』でも出せたなあと。

伊澤彩織 そうですね。『ある用務員』の黒髪ロングと金髪ショートの殺し屋2人組というベースをうまく生かして、『ベイビーわるきゅーれ』という作品ができたので。一緒にやった経験があったからこそ、よりいっそう楽しく演じることができました。

『ある用務員』とは、今年1月に公開した阪元裕吾監督の前作。髙石あかりと伊澤彩織は主人公の命を狙う女子高生の殺し屋2人組として出演し、わずかな登場シーンながら強烈なインパクトを残した。撮影後ほどなくして持ち上がった企画が、2人を主人公に起用する『ベイビーわるきゅーれ』だったというわけだ。

制服姿で「任務」に向かうちさと ©2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会
制服姿で「任務」に向かうちさと ©2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会

まひろ役の伊澤彩織は、2017年に公開された本格アクション映画『RE:BORN』(下村勇二監督、坂口拓主演)の研修生オーディションに合格し、アクショントレーニングを開始。これまで『キングダム』、『るろうに剣心最終章The Final/The Beginning』などでメインキャストのスタントダブルを担当してきた。出演していたミュージックビデオを阪元監督が見て気に入り、ツイッターのダイレクトメッセージでコンタクトを取ったという。

伊澤 普段は裏方が多く、まさか自分がいきなり主役とは思わなかったので、お話をいただいたときは、本当にびっくりしました。セリフのある役って、映画では『ある用務員』が初めてで、それまではアクションで「オラァ」とか「何だテメェ」とか、「キャー」とかしか言ってこなかったので(笑)。

髙石 今回、2人のシーンで長回しが多かったんですけど、会話にまったく違和感がなく、かなり自然にできました。映画を観たら、素の自分がいっぱい出ているなって。打ち解けた相手には舌足らずな口調でしゃべってしまうことがあるんですけど、そういうところとか。会話のテンポがすごく合っているなと感じました。

伊澤 2人のやりとりは、長いシーンだと台本5ページ半くらい。クランクインの前は、セリフがおぼえられなくて不安しかなかったんですけど、いざ撮影に入ったら、どんどん芝居が楽しくなってきて。素の自分と共通点も多い役だったので、撮影していくうちに役柄が自分の中に入ってくる感覚がありました。

組織から同居を命じられ、用意された新居へと向かう ©2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会
組織から同居を命じられ、用意された新居へと向かう ©2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会

「人見知り」と「目立ちたがり」のバランス

『ベイビーわるきゅーれ』のまひろは、相手の目を見て思っていることを伝えられなかったり、会話の輪の中に入っていけなかったりする、コミュニケーションに問題のある女子。何事にもやる気がなく、家に閉じこもりがちだが、いざ敵を前にすると、驚異的な瞬発力と跳躍力を発揮する。

伊澤 私も子どもの頃から人見知りでしたから、まひろのあの感じ、よく分かるんです。でもスタントの仕事を始めてから、人見知りするのをやめました。「人間はコミュニケーションを取らないとケガする」っていうことに気付いて。一手間違えると事故になっちゃいますから。

冒頭から激しいアクションシーンに目が離せない ©2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会
冒頭から激しいアクションシーンに目が離せない ©2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会

一方のちさとは、対照的に率直で明るく、器用に対人関係をこなす。人に調子を合わせながらも、感情が爆発する瞬間があり、また一瞬にして冷静に戻る、起伏の激しいキャラクターだ。

マシンガンを撃つちさと ©2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会
マシンガンを撃つちさと ©2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会

髙石 保育園のときから女優さんになりたいって言っていたんです。生まれてこの方、目立ちたがり、人前に出るのが好きで。高校を卒業してからは、もっと落ち着いたかっこいい女性を目指しているんですけどね(笑)。

伊澤 えー、もう落ち着いてるよ…。私とあかりちゃん、9歳も離れているんですよ。でもすごく大人で、真摯で、年の差をあまり感じないんですよね。お芝居とか、現場でのあり方とか、引っ張ってくれたので、大尊敬してます。

髙石 エッ! じゃあ、私も大尊敬返しです。勝手ながら、年齢で左右される関係じゃないような気がします。こんなに打ち解けるのって、できるものなのかなって。伊澤さんがすごく優しくて、気を遣ってくださる素敵な女性だからこそ、私が自然でいられたのかなと思います。

映画の現場で仕事ができる喜び

高校では映画制作部に所属し、卒業後は大学の映画学科に入ったという伊澤。映画の道に進みたいという夢が現実になり、その喜びをかみしめている。

伊澤 裏方志望だったので、現場を見られるのが楽しい。ドラマとかCMとかいろんな現場にスタントで入ったことはあるんですが、やっぱり映画の現場が一番好きですね。今回はスタントの時とちょっと違ったし…、ちょっとじゃないな、だいぶ違いましたね(笑)。俳優部の撮影の入り方ってこうなんだ、というのを実感できました。

髙石 私も、映画の現場って、舞台とは全然違うなって思いました。舞台は稽古も含めて、1カ月、2カ月一緒に過ごすので、チームの団結力みたいなものが、ゆっくり出来上がっていって、本番で一致団結する感じ。映画は、初めてお会いする方といきなりアクションシーンで一緒になることもあるじゃないですか。こういうのは初めての経験でした。映像は一生残るので、その恐怖はありますけど、短時間に1回で勝負を決めるところが刺激的で、面白かったです。こんな世界もあるのかと。今回の経験を経て、映像にもたくさん挑戦したいなって思いました。

鬼滅、ハリウッド…飛躍の年がコロナで

髙石あかりは、昨年1月初演の舞台『鬼滅の刃』に竈門禰豆子役で出演した。今年8月から第2弾の公演も決まっている。前回の公演は「鬼滅」が社会現象になる前だったので、今回はより大きな注目が集まるに違いない。

髙石 私は以前から兄とアニメを観ていたので、まさか自分が演じることになるとは…。次はみなさんの期待がますます高くなると思いますので、あらためて気を引き締めないと。

伊澤彩織にとっても、2020年は飛躍の1年を予感させる幕開けだった。『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』の日本パートの撮影に呼ばれ、ついにハリウッドの大作にスタントで出演。スタントウーマンとして国際的な舞台へと一歩を踏み出した。しかし、その勢いに水を差したのが新型コロナウイルスだった。

伊澤 2020年の前半は、誰にとってもつらい期間だったと思います。私は自分に向き合える時間がいっぱい作れたので、ひたすら自主練習しながら次の現場を待っていました。後半は撮影が再開して、『ある用務員』から『わるきゅーれ』と、関わる作品に高いモチベーションで臨めました。こんな時期なのに現場があってありがたいという気持ちが強かったです。

髙石 1つの作品を作るのに、何年もかけて、たくさんの人が関わっているのをあらためて実感したので、1つ1つの作品に真摯に向き合っていきたいなと思いました。そういう熱量をためこんだ1年だったのかな。『わるきゅーれ』では、それを爆発させられたと思います。

脱力とアクション、『ベイビーわるきゅーれ』の見どころ

圧巻のラストバトル ©2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会
圧巻のラストバトル ©2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会

伊澤 殺し屋の女子2人組が社会不適合者で...って漫画みたいな設定だけど、両極端な2人がどうやって社会になじんでいくか頑張り、日常のささいな出来事に振り回されながらもなんとか生きていく物語なので、映画を見てくれた方にも共感してもらえる部分が多いと思います。

髙石 映画のキャッチコピーじゃないですけど、2人がいろいろと経験して「成長したり、しなかったり」する物語です。同世代の人たちに、無理に成長しようとしなくてもいいんだって感じてもらえたらうれしい。「あの2人みたいな社会不適合者でもちゃんと生きてるよ」って勇気も与えつつ、寄り添える作品にきっとなっていると思うので。

部屋でのコミカルなやりとりに漂う脱力感がリアル ©2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会
部屋でのコミカルなやりとりに漂う脱力感がリアル ©2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会

伊澤 何者かにならなくちゃいけないような、前向きに全部頑張っていないとダメみたいな風潮があるような気がしますけど、そんなことないと思うんですよ。小さなことでも、ストレスを解放してくれるものさえ何かあれば、それでいいと思うんです。別に成長しなくても、SNSで人に自慢できるようなことがなくても、「よくない?」って、思わせてくれる映画です。

髙石 あとはやっぱり伊澤さんのアクションを見てほしい。現場では生で見られなくて、スクリーンで初めて見たんですけど、もうウルウルしてしまって。私はあれを単なるアクションだとは思えなくて。お芝居でもない、感情と感情のぶつけ合い。今まで抱いてきたアクションへのイメージが変わったというか、それを超えるものを感じました。だから見どころを聞かれたら、迷わずあのラストバトルだって答えます。何コレって、鳥肌が立つと思います!

インタビュー撮影=花井 智子 ヘアメイク=西田 美香(atelier ism®︎)
取材・文=松本 卓也(ニッポンドットコム)

©2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会
©2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会

作品情報

  • 出演:髙石 あかり 伊澤 彩織
    三元 雅芸 秋谷 百音 うえきや サトシ 福島 雪菜 / 本宮 泰風
  • 監督・脚本:阪元 裕吾
  • アクション監督:園村 健介
  • 音楽:SUPA LOVE
  • 主題歌:KYONO「STAY GLOW feat.TAKUMA (10-FEET)」
  • 挿入歌:髙石あかり×伊澤彩織「らぐなろっく ~ベイビーわるきゅーれ~feat. Daichi」
  • 配給:渋谷プロダクション
  • 製作年:2021年
  • 製作国:日本
  • 上映時間:95分
  • 公式サイト:https://babywalkure.com/
  •  7月30日(金)テアトル新宿ほか全国順次公開

予告編

映画 女優 鬼滅の刃 ヤクザ