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コロナに翻弄された2021年、せめて「チルい」年末を : 三省堂の辞書編集者が選ぶ2021年の新語

言語 社会

辞書編集者が選ぶ、ただの流行語ではない、後世まで残りそうな言葉。

『三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2021」』の選考会が11月30日、都内で開催され、気持ちがゆったりした、身心の緊張を解くような心地よさを表す若者言葉「チルい」が大賞に選ばれた。

「ナウい」「エモい」の流れをくむ選び抜かれた外来語

年末に出版社や検索エンジン各社が発表する「今年の新語」や「最も検索された言葉」は、1年の総括として注目される。三省堂では、「辞書に収録するにふさわしい後世まで残る言葉」を選定しており、単なる流行語とは一線を画するのが特徴だ。

chill out(落ち着く)から派生した「チル」は2010年代後半から「チルする」「チルってる」「チルな」「チルい」など若者を中心にさまざまな品詞に活用されて使われてきているという。

「チルい」は「気持ちがやすらぐ」「ゆったりする」「くつろげるようす」を表す形容詞で、「日曜の午後はチルい」「チルい雰囲気がいい感じのカフェ」などと使う。コロナに翻弄された2021年も、年末くらいは「チルい」気分で過ごしたい。

外来語は「ワイドな」などのように、形容動詞で受け入れられることが普通であるが、形容詞として受けいれられることは珍しく、ほかには、「ナウい」「エロい」「グロい」「エモい」などを数えるのみである。

『現代新国語辞典』主幹を務める小野正弘明治大学教授はこのように解説する。

外来語が形容詞「〇〇い」の形で定着するのは極めて例外的な事例として、(辞書に)記録しておかなければならないことが選定理由となった。

新型コロナウイルスの流行に関連して広まった言葉としては、5位「人流」、6位「ウェビナー」、9位「おうち〇〇」がランクインした。

三省堂  辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2021」

1 チルい 落ち着く意の「チルアウト(=chill out)」の「チル」を形容詞化したもの。(音楽などで)心身の緊張を解くような、心地よさが感じられる様子だ。
2 ガチャ 結果のよしあしが自分で選べず、偶然に左右されること。よくないことを引き当てたうらみごとや言い分けに用いる場合も多い。「親―(=親の地位や収入などによって、子の人生や運命がほぼ決まってしまうこと)」
3 マリトッツォ パンをカスタネットのようにひらき、生クリームをたっぷり詰め込んだ菓子
4 投げ銭 ①ふるく、芝居や見世物などで観客から舞台へ、また、大道で通行人から芸人などへ、芸の代価として、紙に包んだ銭を投げ与えたこと。また、その銭。 ②ウェブサイトで、無料で企画やコンテンツを作成したことに対して、応援の意味を込めて寄付すること
5 人流 (物流に対して)旅客の輸送。またはそれに関係する活動
6 ウェビナー インターネットを介して行う講演会や研修会。また、そのためのアプリケーションなど
7 ギグワーク インターネット経由で発注先から直接個人で請け負う単発の仕事。労働機会の拡大や人材活用、副業の促進などに資する反面、多く低賃金であることや、雇用契約がなく、トラブルに際しての補償のないことなどが問題視される
8 更問い 記者会見などで、会見内容の不明な箇所をただしたり、関連する質問を発したりすること。また、その質問
9 おうち〇〇 ①家(いえ、うち)の尊敬語・美化語。②自宅での〇〇。21世紀になって広まった言い方で、2020年の新型コロナウィルス感染拡大にともない、特に使う機会が増えた
10 Z世代 1990年代後半から2000年代以降に出生した世代。生まれたときから、あたりまえのようにインターネット環境が整っていて、情報を得たり、価値観を形成する際のよりどころとするところに特徴がある。デジタルネイティブ。ジェネレーションZ

表中の語釈は三省堂による。

バナー写真 : 三省堂「今年の新語2021」の大賞発表風景(2021年11月30日)

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