結婚問題で眞子さまを諭した天皇陛下61歳の記者会見

社会 皇室

天皇陛下は61歳の誕生日(2021年2月23日)に際しての記者会見で、コロナ禍に苦しむ国民を励まし、東日本大震災の被災者に心を寄せられた。令和皇室の課題になっている秋篠宮家の眞子さまの結婚問題にも初めて言及し、「眞子内親王がご両親とよく話し合い、多くの人が納得し喜んでくれる状況になることを願う」と述べられた。ご結婚はまだ決定ではなく、国民の理解を得ることが先であると、陛下が眞子さまを諭されたのだ。

「国民一人一人への思いを持ちながら」

陛下の記者会見は外国訪問などの際にも行われるが、コロナ禍で中止となり、実に1年ぶりとなった。国民との直接の触れ合いが長い間、できなくなっているだけに、陛下は丁寧にこの間の思いを話し、国民に励ましのメッセージを送られた。

「今しばらく国民の皆さんが痛みを分かち合い、協力し合いながらコロナ禍を忍耐強く乗り越える先に、明るい将来が開けることを心待ちにしています」

「(つい最近の福島県沖地震で)東日本大震災は過去ではなく、現在も続いていることとして考える必要があると改めて感じました。機会があれば、10年を超す歳月を経た被災地を訪れてみたいと願っております」

「今は皆さんの所に会いに行くこと、お話をすることをしてはいけないので、国民の皆さん一人一人への思いを持ちながら、今、自分ができることはいったい何だろうか常に考えながら、日々を過ごしてきたように思います」

「国民と共にある皇室」の姿勢を貫かれている陛下らしい言葉が続いた。

国民の誤解を解く必要が

記者会見は、天皇、皇后両陛下が新年に当たって公表されたビデオメッセージとは違い、記者側の質問に答えていただくもので、中にはお答えにくい質問も含まれている。今回の会見では、眞子さまの小室圭さんとの結婚問題がそれに当たる。

記者側の質問は、「お二人の結婚に関して国民の間でさまざまな意見があることについて、どのように捉えていらっしゃいますか」。天皇会見で、内親王に関するこんなストレートな質問は珍しい。しかし、陛下がこれに答えねばならないほど事態は深刻であり、また国民の“誤解”を解く必要もあったのではないかと推察する。

事態の深刻さは、「眞子内親王の結婚については、国民の間でさまざまな意見があることは私も承知しております」との陛下の発言でよく分かる。さまざまな意見、すなわち国民の間で「結婚反対」の声があることを、「国民と共にある皇室」の姿勢を貫かれている陛下としては、見過ごすことができなくなっていた。

国民の誤解とは、昨年11月、立皇嗣の礼が終わって間もなく、眞子さまが3年近く凍結されていた結婚に関する「お気持ち」を文書にして公表した際の、次の文言をめぐる解釈だ。

「この文章を公表するに当たり、天皇皇后両陛下と上皇上皇后両陛下にご報告を申し上げました。天皇皇后両陛下と上皇上皇后両陛下が私の気持ちを尊重して静かにお見守りくださっていることに、深く感謝申し上げております」

この文章を読む限り、天皇皇后両陛下と上皇上皇后両陛下が眞子さまの小室さんと結婚したい気持ちを尊重されている、つまり結婚を認めているとも解釈できる。しかし、「静かにお見守りくださっている」ことは、天皇陛下が結婚を認められていると解釈していいのか、判断に迷った国民は少なくなかった。さらに、秋篠宮さまの「結婚容認」の発言で、ご結婚は決定されたのかと、国民はさらに混乱して、宮内庁に抗議の電話が殺到した。

秋篠宮家ご一家(宮内庁ウェブサイトより)
秋篠宮家ご一家(宮内庁ウェブサイトより)

陛下は今回の会見という公の場で、「眞子内親王が、ご両親とよく話し合い」と異例の表現で、もっと親子間で話すよう諭された。そして、陛下は「(これまでの記者会見などで)秋篠宮が言ったように、多くの人が納得し喜んでくれる状況になることを願っております」と述べられた。陛下は、まだ国民が眞子さまの結婚を喜ぶ状況ではないから、現段階では結婚は認められないと、遠回しの表現で伝えられたのである。

最高裁の差し戻し判決のようなご決断

筆者はこのご発言を聞いて、例えは妥当ではないが、最高裁の「差し戻し判決」を思い浮かべた。裁判で最終判決を下す最高裁が、まだ審理が尽くされていない点を指摘して、前の判決を取り消し、もう一度この点について審理しなさいと、下位の裁判所にやり直しをさせるため、元に戻すことだ。

陛下は、秋篠宮家の親子の話し合いが足りないと判断された。眞子さまに結婚したい気持ちがあるのなら、その前になぜ多くの国民が反対しているのかをよく考え、国民の理解が得られる状況にしなさいと、「お気持ち公表」の前の時点に差し戻された、と筆者は考える。今から国民の理解を得るためには大変な苦労があるのは明らかで、そのためにも眞子さまは両親ともっと話し合い、親子で協力し合って行きなさいと、陛下は諭されている。

天皇家の家長として、陛下は今回のご回答を出すに当たり、同じ娘を持つ親として、つらい思いをされたことだろう。ただ、今回のご回答をよく読むと、上皇さまと秋篠宮さまのご意見を反映させたものであることがうかがえる。

陛下は眞子さまの結婚問題の直前に、「平成期、上皇さまと秋篠宮さまと定期的にお話しする機会がありましたが、(コロナ禍で)直接顔を合わせられない中でどのようにコミュニケーションを取られていますか」との質問にこう答えられた。

「上皇陛下や秋篠宮と直接会う機会が減っていることは残念ですが、上皇陛下や秋篠宮とは適宜連絡を取るようにしております。ただし、詳細については回答を控えたいと思います」

お三方の連絡ルートはきちんと確保されており、今回の眞子さまの問題についても連絡を取り合っておられたと推測される。慎重な性格の陛下が記者会見でここまで発言されたのは、お三方の共通の理解があったからであろう。陛下のご判断が示されたことで、秋篠宮家が早く事態を改善するよう、多くの国民が期待している。

絶妙のタイミングで首相ねぎらう

天皇、皇后両陛下と長女愛子さま(宮内庁ウェブサイトより)
天皇、皇后両陛下と長女愛子さま(宮内庁ウェブサイトより)

今回の会見の最後の方に、今年20歳となる天皇家の長女、愛子さまの結婚についての関連質問があった。陛下はこう答えている。

「愛子は大学生活が始まったばかりですので、いろいろなことを学びながら、自分としての視野を広めていくことになると思います。私もその過程で恐らく相談に乗ることと思いますので、結婚のことも含めて、いろいろ将来のことも話し合う機会があるかと思います」

コロナ禍のため、天皇誕生日の当日の行事は例年より大幅に規模が縮小されて行われた。「祝賀の儀」で菅義偉首相から祝意のあいさつを受けた陛下は、次のようにお応えになっている。

「深く感謝します。いろいろ大変なことがあると思いますが、お体に気を付け、お仕事を続けてください」

もちろん、陛下の言葉に政治的な意味合いは何もないが、コロナ禍をはじめ山積する課題に加え、自身の長男による官僚接待問題まで抱えた首相に、絶妙のタイミングでこれだけ的確にお応えできるのは陛下だけだろう。陛下のお言葉はとても重いと、筆者は実感した。

天皇誕生日の「祝賀の儀」で、菅義偉首相(右)のあいさつを受けられる天皇陛下=2021年2月23日、皇居・宮殿「松の間」(時事)
天皇誕生日の「祝賀の儀」で、菅義偉首相(右)のあいさつを受けられる天皇陛下=2021年2月23日、皇居・宮殿「松の間」(時事)

バナー写真:61歳の誕生日を前に、記者会見される天皇陛下=2021年2月19日、東京都港区の赤坂御所[代表撮影](時事)

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