ニッポンの金メダル候補

永原和可那・松本麻佑ペア:高さを生かした攻撃スタイルで頂点を目指す日本最強ペア―東京五輪の金メダル候補たち(6)

スポーツ 東京2020

日本バドミントン界が悲願としていた五輪のメダルを初めて獲得したのは、2012年ロンドン五輪、藤井瑞希・垣岩令佳組の銀メダルだった。それを皮切りに日本勢は国際大会で躍進を続け、東京五輪では男女全種目でメダルが期待されるまでになった。中でも金メダルに最も近いと言われるのが、「ナガマツ」こと女子ダブルスの永原和可那と松本麻佑(まゆ)。2018、2019年世界選手権連覇の実績を引っ提げ、頂点だけを視野に戦いに臨む。

追う立場からのシンデレラ・ストーリー

ともに北海道に生まれ、子どもの頃それぞれの地でバドミントンを始めた永原和可那と松本麻佑。年齢は永原が24歳、松本が25歳だが、永原が早生まれのため同学年にあたる2人は、高校卒業後の2014年、秋田県の北都銀行に就職。そこでチームメイトとなった。

入社後、2人はペアを組むようになり、大会で少しずつ成績を残し始める。17年には全日本総合選手権で3位になり、翌年、日本A代表に選ばれた。最上位に位置づけられるカテゴリーのメンバーとなったが、上位にはリオデジャネイロ五輪金メダルの高橋礼華・松友美佐紀らがいて、追いかける立場でしかなかった。

だが、そこから「シンデレラ・ストーリー」が始まる。

18年の世界選手権、当初出場権を持っていなかった永原・松本は、他国のペアの出場辞退により、繰り上げで日本勢四つめのペアとして出場が決まる。

そして初戦となった2回戦で逆転勝ちを収めると、3回戦では高橋・松友に2-0のストレートで勝利した。

最大のライバルは日本勢

勢いはとどまることを知らない。準々決勝、準決勝を勝ち抜き、決勝で対戦したのは福島由紀・廣田彩花。前年世界選手権で銀メダルの実績を持つペアであり、しかも永原・松本は過去6戦して一度も勝ったことがない相手だった。それにひるむことなく挑むと、2-1で勝利して優勝。世界選手権女子ダブルスでは日本勢にとって41年ぶりの金メダルだった。

この優勝はただの勢いではなかった。

翌年の世界選手権で連覇を遂げると、2021年3月の全英オープンでも優勝。伝統を誇り、世界のトップ選手らが重視する大会での勝利には大きな価値がある。

開花した世界レベルのポテンシャル

今や押しも押されもせぬ世界のトップペア。一足飛びに階段を駆け上がった2人の活躍は、振り返ってみれば決して偶然の産物ではない。

ペアを組むきっかけは、当時の監督が「高さ」というポテンシャルを感じ取ったことにある。永原は170センチ、松本は177センチの身長を誇る。2人が組めば、それまで日本女子にいなかった大型ペアが誕生する。そこに可能性を見出した。

その判断が間違いではなかったことは、長身から打ち下ろすスマッシュなど攻撃的なスタイルを武器とする、世界レベルでの活躍が物語る。

組んでみれば身体面以外のプラス材料もあった。慎重に物事を考える永原に対し、松本は思い切りのよさを持つ。対照的な性格が試合の中では相乗効果を生み、ペアとしての強みとなっている。

中国や韓国勢、何よりも福島・廣田と、強敵は大勢いる。それでも五輪で金メダルに輝く日を思い描いて、2人はコートに立つ。

バナー写真:2021年3月の全英オープンでは福島・廣田ペアを破って優勝した(2021年03月21日、イギリス・バーミンガム)時事

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