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ラジオNIKKEI「大人のラヂオ」nippon.comコーナー第17回「画家が直面したウクライナの厳しい現実と今 」がOAされました!

編集部からのお知らせ

6月24日(金)にOAされたラジオNIKKEI「大人のラヂオ」nippon.comコーナー。世界の紛争地域や貧困地域で活動する壁画アーティスト、ミヤザキケンスケさんと、ウクライナ出身のnippon.comエディター、ヴャチェスラヴ・オニスチェンコが出演。番組MCの一青妙(ひとと たえ)さんとウクライナ情勢について語り合いました。

学生の頃、TV番組の企画で訪れたフィリピンで孤児院の子供たちと壁画を描くことで彼らの表情が見違えるほど輝きだしたのを見て、壁画アートの持つ力に気づいたというミヤザキケンスケさん。以来、フィリピン、ケニア、東ティモール、エクアドル、ハイチなど紛争や貧困に苦しむ地域にてカラフルでユーモア漂うビジュアルメッセージを遺してきました。

ウクライナには、2017年、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の依頼で訪問。首都キーウとマリウポリで壁画を描くことになりました。そこで驚いたのはウクライナの街にはすでに多くの壁画アートがあふれていたこと。オニスチェンコによれば、2014年のマイダン革命(親ロシア派のヤヌコーヴィチ大統領が失脚しロシアへ亡命することになった事件)をきっかけに、自由やレジスタンスをテーマにした文化が開花。その一つとして多くの壁画が生まれました。

しかし、当時、ウクライナは親ロ派との紛争状態で、キーウからマリウポリへは「飛行機は空爆の危険がある」と言われ、鉄道で13時間かけて移動。キャンバスに選んだのは、2014年の革命の時の弾痕が今も残る第68学校の壁。そこからロシア国境まではわずか数キロで、学校のすぐ裏の団地は崩落していたということです。

壁画のテーマはウクライナでは誰もが知る民話「てぶくろ」。森に落ちていた手袋に最初はネズミが棲みつき、そこにカエルやウサギなどの小動物、最後はオオカミやクマまで入ってきて、ぎゅうぎゅう詰めになりながらも仲よく暮らすという寓話で、「共同と共存という世界観がウクライナにふさわしい」と選びました。

ウクライナ壁画プロジェクト(2017)。2014年の「ウクライナ騒乱」で被弾し、いまだに弾痕が残るマリウポリ市の第68学校の壁に平和のメッセージを込めた壁画を描いた 提供:Over the wall
ウクライナ壁画プロジェクト(2017)。2014年の「ウクライナ騒乱」で被弾し、いまだに弾痕が残るマリウポリ市の第68学校の壁に平和のメッセージを込めた壁画を描いた 提供:Over the wall

11m四方もある大きな壁画の高い場所の大空やカモメは、現地のとび職の方々が、地上に近いところの花は小学生たちが描いてくれました。協働作業の合間には制作メンバーの自宅に招かれ、ボルシチなどの家庭料理や地ビールを振舞われたということです。

しかし、この春、マリウポリは戦火に包まれ、平和と共存の思いを込めて描かれた壁画には砲撃で大きな穴が開いてしまいました。共に壁画を描いた仲間ともなかなか連絡がとれず、たとえ行方が分かっても悲しい話ばかりが入ってくると語るミヤザキさん。

「でも、僕は、マリウポリにもう一度行って、現地の人たちと必ず壁画を修復したい。壁画を描き直すことで、再び現地の人たちの心に夢と希望を灯したいのです」

ラジオ番組では、他にもウクライナの置かれた厳しい現実について熱く語り合われています。ぜひお聴き下さい。

◆番組は現在もオンデマンドで聴取可能。放送に入りきらなかったエピソードも収録したロングバージョンがお聴きいただけます。

◆収録の様子はnippon.comの公式Instagramでもご覧いただけます。

バナー写真:「大人のラヂオ」nippon.comコーナー2022年6月24日放送分収録の様子。左からミヤザキケンスケさん、一青妙(ひとと たえ)さん、ヴャチェスラヴ・オニスチェンコ 撮影:nippon.com編集部

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