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総額26億円! 高額当せんを招く猫:宝くじ売場のマコちゃん |働く動物たち episode 1

旅と暮らし 社会

日本ではさまざまなシーンで、動物に出会うことができる。動物自身も幸せに暮らしながら、人間の役に立つ動物たち。本シリーズでは、癒しの存在であったり、彼らがいることで人々の暮らしが豊かになったりする、日本の働く動物たちを紹介する。記念すべき第1回は、「リアル招き猫」のマコちゃん。彼女が宝くじ売り場の店番をするようになってから、実に総額26億円に上る高額当せんが出たという。今や遠方からも宝くじファンが訪れるようになった売り場へ、その秘密を探りに行ってみた。

店番を始めたら高額当せん続出

数百円で“夢”が買える宝くじは、日本人にとって身近な娯楽である。

全国に約8000カ所あるという売り場の中でも、「大当たりが出る」と絶大な人気を誇るのが、東京都江戸川区にある『吉田商店』。

マコちゃんが働く宝くじ売り場の看板
マコちゃんが働く宝くじ売り場の看板

接客をしているのは、店主の吉田誠一さんと弟の俊秋さん、そして「リアル招き猫」のマコちゃんだ。

招き猫は、福を招くと言われ、商売繁盛や千客万来などの願いを込めて飾られる置物。その多くは陶器だが、この店では本物の猫が宝くじ当せんという福を招いている。

「10年前、近所で生まれた子猫を見に行った母が一目ぼれして、うちのコにしたんです」(誠一さん)

母のツヤさんは、誠一さんたちが子どもの頃に飼っていた猫と同じマコという名前を付け、まるで娘のようにかわいがっていたという。

「そのうち一緒に店番をするようになって、そうしたらその年の年末ジャンボで高額当せんが出たんですよ」(俊秋さん)

店主の吉田誠一さん(右)と弟の俊秋さん
店主の吉田誠一さん(右)と弟の俊秋さん

「リアル招き猫」と評判に

いつしか「マコちゃんをなでると、宝くじが当たる。リアル招き猫だ」と評判になり、全国からお客さんがやってくるようになった。

真っ白な毛並みが美しいマコのしっぽは、先がフック状に曲がっている。

この“かぎしっぽ”を持つ猫は「幸運を引っ掛けてくれる」とされ、欧州ではラッキーの象徴。

欧州では「幸運をひっかける」と言われるフック状に曲がったカギしっぽ
欧州では「幸運を引っ掛ける」と言われるフック状に曲がったかぎしっぽ

今はコロナ禍で、お客さんとの触れ合いを避けているが、以前は宝くじを買った人の多くがマコをなで、当せんを願った。

当たった人は好物のおやつを持ってお礼を言いに来る。

マコが来てからの10年で、『吉田商店』から出た高額の当たりくじは29本。

総額はなんと、26億円になるという。

近所の人気者

多くの人たちをハッピーにしてきたマコだが、マコ自身は2年前につらい経験をした。母のように慕っていたツヤさんが他界したのである。享年87だった。

「家の中を探し回ったり、呼ぶように鳴いたりして、かわいそうでしたね。今もまだ、心の痛手から立ち直っていないように見えます。私たち兄弟じゃ、母の代わりにはなれませんから」(誠一さん)

元飼い主の遺影に口づけするマコちゃん
元飼い主の遺影に口づけするマコちゃん

朝8時半、店を開けると近所の人たちが「マコちゃん、おはよう。元気?」とあいさつにやってくる。

「母のときと同じなんですよね。みなさん、こんなふうに母の健康を気遣ってくれていました」(俊秋さん)

「そうそう。今はマコちゃんが母の代わりをしてくれているような気がするよね」(誠一さん)

天国にいるツヤさんに見守られながら、今日もマコはお店に福を招いている。

Profile

名前:マコ
年齢:10歳 メス
主な仕事内容:お客さまに福を招く
勤務先:京葉交差点宝くじセンター「吉田商店」
東京都江戸川区東小松川1−8−11
http://www.takara-kuji.com

バナー写真:宝くじ売り場で店番をする「看板猫」のマコちゃん 撮影:山口規子

宝くじ 招き猫 吉田商店