「ラーメン不毛の地・大阪」とは言わせない! 老舗からマニア注目の新店まで「食べるべき一杯」
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「高井田系」の誕生と大阪ラーメンの発展
大阪発のご当地ラーメンといえば、まず極太麺の醤油(しょうゆ)味で知られる「高井田系ラーメン」の名が挙がる。1950年代に現在の大阪市東成区や東大阪市にあたる高井田地区周辺で誕生した。戦後間もない時代、労働者の町で安価で腹持ちのよい食事として親しまれ、それ以来、他府県でも知る人ぞ知る存在となった。
同じ頃、「ミナミ(難波・心斎橋・道頓堀・千日前が中心)」や「キタ(梅田・北新地が中心)」などの繁華街では、仕事帰りや飲みの締めとして気軽に立ち寄れる屋台ラーメンが人気だった。当時はまだ専門店は少なく、あくまで「ラーメン=屋台の一杯」という認識にすぎなかった。
ラーメン不毛の地に差した希望の光
その後、1970年代〜80年代にかけて屋台は減り、路面店が増えていった。それでも大阪の食文化においてラーメンは主役の座には至らなかった。
大阪は「食の都」として知られ、たこ焼きやお好み焼きに代表される「粉もん文化」が深く根付いている。その一方、同じ小麦粉を原材料とするラーメンは長らく地元の味の主役になれず、90年代頃までは「大阪でラーメンは、はやらない」とまで言われてきた。その背景には、だし文化の大阪において、麺類と言えばうどんが選ばれるという文化があった。
しかし、2000年代に入るとその流れが大きく変わる。
日本中でラーメンブームが沸き起こり、グルメとして定着した。歩調を合わせるように、大阪でもラーメンが食文化の主役級に躍り出た。人気店が生まれ、「うまいラーメンを求めて並ぶ」行為が浸透していく。原材料や「無化調(化学調味料無使用)」にこだわりつつ、渾身(こんしん)の一杯で勝負する職人スタイルが脚光を浴び、地元のテレビや雑誌でも特集が組まれるようになった。
「ラーメン不毛の地」と揶揄(やゆ)されたのはもはや昔の話。ラーメン文化の集積地・東京のクオリティーに肩を並べる名店がいくつも誕生し、大阪は東京に次ぐラーメン激戦区となった。
“映え”と“職人技”が融合する新時代
味の探求が一般化すると、次に来るのは味以外の追求だ。SNS全盛時代のラーメンには、おいしさに加え、見た目の美しさや“写真映え”も求められる。大阪ラーメンにおいても、味だけではなく「ビジュアル」や「雰囲気」へのこだわりが人気を博し、ライト層も巻き込んでブームをさらに加速させている。
ここからは今の大阪市内で食べるべき一杯を紹介していく。「大阪ご当地ラーメン発祥」の老舗から『ミシュランガイド』で星を獲得した世界が注目する一杯まで。紹介する8店を巡れば大阪ラーメンの魅力を漏れなく堪能できるはずだ。
『中華そば 光洋軒』(東成区・布施)
創業は1953年。ラーメンという言葉すら定着していなかった時代に屋台から始まり、「高井田系ラーメン」発祥の店として今なお多くの人に愛され続けている。
『金龍ラーメン 道頓堀店』(中央区・なんば)
屋台ラーメンへの対抗馬として誕生。1980年代に道頓堀で創業して以来、観光客はもちろん、飲んだ帰りの地元客にも重宝され、大阪を代表する存在へと成長した。

『中華そば 光洋軒』の「チャーシュー麺」(左)、『金龍ラーメン 道頓堀店』の「ラーメン」(右)
『カドヤ食堂 総本店』(西区・西長堀)
2000年代の大阪ラーメンブームをけん引した。一番人気の「中華そば」は、まさに醤油ラーメンの王道を極めた一杯。
『人類みな麺類』(淀川区・南方)
ユニークな店名とライブ映像が流れる印象的な空間で若者を中心に注目を集めている。ラーメンそのものは実直。しっかりと芯が通っている。

『カドヤ食堂 総本店』の「中華そば」(左)、『人類みな麺類』の「らーめん原点(薄切り焼豚)」(右)
『ラーメン人生JET 福島店』(福島区・福島)
大阪随一のラーメン激戦区で長い行列ができる。濃厚な鶏白湯スープは、ひと口すすると鶏のうま味がじゅわっと広がる。
『鶏soba 座銀』(西区・肥後橋)
“映え”と“職人技”が見事に融合した新時代ラーメン店の象徴だ。素揚げしたゴボウが美しく盛り付けられ、まるで一皿のアートのよう。

『ラーメン人生JET』の「鶏煮込みそば」(左)、『鶏 soba 座銀 本店』の「鶏soba」(右)
『中華そば 桐麺 総本店』(淀川区・十三)
スープが無い状態で、麺そのもののおいしさを追求した異色の店だ。
『麦と麺助』(北区・中津)
いつ訪れても行列が絶えない人気店。2020年から3年連続で『ミシュランガイド』ビブグルマンを獲得した。

『中華そば 桐麺 総本店』の「桐玉」(左)、『麦と麺助』の「蔵出し醤油そば」(右)
撮影=山川大介
バナー写真:大阪のご当地ラーメンの数々