コラム:私の視点

服装にも「政治色」がある?

政治・外交 文化

日本で初めての女性首相誕生の政治的、社会的意義については、いろいろ論評がみられる。

しかし、今後注目すべきことの一つは、服装についての論評であろう。なぜなら、男性、とりわけ、男性政治家については、ダンディーだとか、背広の着こなしがよいといったようなコメントは時として聞かれるが、背広の色、形などが話題となることはあまりない。

そもそも、日本では男性政治家は、ほとんど、いつも地味な色の背広にネクタイ姿であり、かつての吉田茂首相のように和服姿にでもならない限り、関心を向けられない。けれども、女性政治家の場合には、服装は本人も注意を払い、また、第三者も注目する場合が多い。

政治家の服装は男女を問わず、歴史的に「政治色」を帯びる場合も少なくなかった。2011年、米国で「Power Dressing : First Ladies, Women Politicians & Fashion(力を見せる服装)」という書物が出版されたが、そこでは、かつて欧州の王や女王が、肩をいからした形の服装や大きな袖の衣装を身につけたのは、権力と権威を示すためであったと記されている。

現代においても、中国の人民服や、南米の革命家のかぶったゲバラ帽などは、革命精神の体現という「政治的意味」を帯びている。そうした政治的意味を服装に込めるのは、女性の場合、特に行われやすい。

例えば、2016年にヒラリー・クリントン氏はドナルド・トランプ氏の第1期目の大統領選挙の対抗馬として出馬し、敗北した。敗北宣言を行った際に、その服装によって、きわめて「政治的」な演出を行った。クリントン氏は、その時、紫色の襟のスーツで登壇した。これには、ある政治的メッセージが込められていた。もともと、米国の共和党のシンボルカラーは赤、民主党は青である。紫色は青と赤の混合あるいは融合である。すなわち、個人的中傷と激しい分断に彩られた選挙戦であったが、大統領が決まった以上、これからは、一致団結、融合して頑張ろうというメッセージだった。

高市早苗首相が敬愛する英国のマーガレット・サッチャー元首相も、「鉄の女」といわれて、強くりりしい面ばかりが伝えられるのを嫌ってか、ある時、エプロン姿で料理している場面の写真を紹介し、「家庭を大事にする優しい女性」のイメージを投影しようとしたといわれる。

また、女性政治家は、男性とは異なって、しばしば、真っ白の上着を着て登場し、そこに、女性の政治的存在を強調する場合がまれではない。高市首相が、迎賓館におけるトランプ米大統領との正式会談の際、白い上着姿であったことは、初の女性総理であることを、それとなく強調する意味も込められていたのかもしれない。

バナー写真:米大統領選でトランプ氏に敗れ、ニューヨークのホテルで敗北宣言をするヒラリー・クリントン氏=2016年11月9日(AFP=時事)

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