コラム:私の視点

「可愛い!」心を奪われたウガンダの生地

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今から約10年前のことだ。NGO(非政府機関)のスタッフとして東アフリカのウガンダに赴任した私は、首都カンパラのローカルマーケットを歩き回っていて、店先に並ぶ色とりどりの生地を見た瞬間、心をわしづかみにされた。

赤や青、緑、紫などさまざまな色で彩られ、ハンバーガーや扇風機、おカネ、車など独特のモチーフの柄を施したアフリカンプリントの生地だった。それらは床から天井までうず高く積み上げられ、壁一面を覆い尽くしている。色の洪水に圧倒されながら、私と友人は宝探しをするかのように、「あの柄が可愛い!」「こっちの方がいい!」と言い合って、自分のお気に入りの柄探しを楽しんだ。

その後も、日本からウガンダを訪ねてくる何組かの友人たちを同じ場所に連れて行くと、みな一様に「ここ楽しいね!」「どの柄も可愛い!」と喜ぶのである。2014年当時の日本のファッション業界では、アフリカンプリントを使ったアイテムを見かけることはなかったので、友人たちが珍しがるのも不思議ではなかった。

今でこそ、春夏のシーズンには大手セレクトショップの店頭にアフリカンプリントのお洋服が並ぶようになったが、これは19年にディオールがモロッコ・マラケシュで開催したクルーズコレクションのショーの影響が大きい。これを機に、ファッション業界の春夏の定番素材としてアフリカンプリントが認識されるようになったが、当時はまだそのような状況からは程遠かった。

友人たちの反応をみて、私は直感的に「こんなに需要があるのなら、これでモノを作って日本に輸出したらビジネスになるかもしれない」と思いついた。ただ日本人の特性として、派手なものを身につけることには抵抗がある。その当時もノームコアと呼ばれる、ベーシックな色味や定番なデザインが、トレンドの主流であった。

そんな日本でこのユニークでカラフルな素材のアイテムを受け入れてもらうにはどうしたらいいのか。たどり着いた答えは、洋服ではなく、バッグを作るということであった。派手柄の洋服だと身につけるのは難しいかもしれないが、ベーシックな色味の洋服にワンポイントで色や柄を取り入れる手段としてのバッグを提案したらいいのではないかと考えたのだ。

また洋服を作るとなると、S・M・Lとサイズ展開を考え、それぞれに在庫を用意する必要があり、かなりの資金がいる。自己資金で小規模にスタートしようと考えていた私には、少しハードルが高く感じられたため、やはりバッグが最適であろうという結論に至った。デザインについては、私自身のコスパ思考とあいまって、1つのバッグで4通りの使い方ができるものを考案した。さらにバッグインバッグをつけることで、「お得感」を出してみた。

完成した初代アケロバッグ=2015年1月筆者撮影
完成した初代アケロバッグ=2015年1月筆者撮影

バッグには「アケロ」と名付けた。この言葉は、私が仕事でウガンダの田舎を訪ねた際、現地の女性から付けてもらった名前である。「いいものを運んでくる」という意味を持つアケロは、バッグに付けるにはうってつけの名だと思った。

こうして、私の会社RICCI EVERYDAYのファーストプロダクトであり、会社のアイコンでもある「アケロバッグ」が生まれた。アフリカ由来の素材と色彩、日本的なデザインを掛け合わせたこのバッグは、今ではオンラインストアだけではなく、日本全国の百貨店や商業施設、セレクトショップの店頭を飾るまでになった。10年前の直感が、日本の多くの女性に受け入れられたことをうれしく思う。

バナー写真:ウガンダの首都カンパラの布屋にうず高く積み上げられた色とりどりの生地=2024年1月撮影

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