コラム:私の視点

ウガンダの「リープフロッグ」経済で思うこと

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東アフリカの内陸国ウガンダは、北部で綿花がとれるため、伝統的に繊維産業が強い。そして国内にいくつもある紡績工場や加工工場のうちの1つは、日本のヤマトシャツ株式会社の社員であった柏田雄一さんが、1960年代にウガンダで始めたものだ。

現在は残念ながらインド資本の別の工場に買収されてしまい、柏田さん自身もお亡くなりになっている。ただし、柏田さんがこの国の繊維産業に残した功績は、今でも知る人ぞ知る逸話として語り継がれている。

功績とは、高い技術をもった縫製士を多く育ててくれたことだ。実は私の会社RICCI EVERYDAYのスタッフの何人かも、かつて柏田さんの下で働いていた。「Mr.Kashiwadaはとても良い人で、毎日声をかけてくれました」。技術だけでなく、柏田さんの人間味溢(あふ)れたマネジメントスタイルの片りんを、彼女たちの言葉から感じ取ることができる。

どの国でも、製造業は国の発展に大きな役割を果たす。日本の戦後、特に高度経済成長期には、地方から都市部へ移り住んだ若い労働者たちが製造業の現場を支えた。工場は雇用を提供し、賃金所得の増加は消費と貯蓄を押し上げる。こうした内需の拡大がさらなる生産投資と雇用を呼び込み、経済成長の好循環が形成されていったことは、よく知られている。

ところが今、ウガンダを含むアフリカ各国では「リープフロッグ(カエル跳び)」と呼ばれる現象が起きている。経済発展モデルの1つで、第1次産業から第2次産業を飛び越えて、第3次産業に主力が移る現象を指す。実際にサービス業における革新のスピードはめざましい。これはもともと国内の法規制が乏しいからでもある。

例えば、ドローンで医療用の血液や薬品を農村地域に運んだり、モバイルマネーやUberのようなタクシー配車システムが普及したりしたのも、その流れの一環だ。しかしリープフロッグによって、国民の生活が変わったかと言われると、実はそうでもない。生活はいくらか便利になったと思うが、暮らしが豊かになったのは、一部の人に限られているように感じる。

このため、どんなに技術が進歩しても、多くの人に雇用を提供する製造業がなければ、人びとの生活は豊かにならないのではないか、というのが私の得た結論だ。ただし、繊維産業に限って言えば、仮にウガンダに新工場を作ろうとしても、生産効率は圧倒的にアジアに比べて低く、投資する側はコスト高に感じてしまう。またアフリカ各国には、欧米からの古着やアジアからの衣料品が大量に安い価格で流入しており、国内生産を行うことをさらに難しくしている。

では、どうすればいいのか。ファッション産業に身を置く者として、この難題に悩まされ続けている。私がたどり着いた1つの答えは、アジアとは異なる製造業のモデルを構築すること、つまり「ローカル×高付加価値」を追求することだ。

ウガンダには、かつて柏田さんによって長い時間をかけて培われた縫製技術がある。縫製士たちの仕事に向き合う姿勢もプロフェッショナルそのものだ。モノ作りの後ろ側には、時間があり、人がいて、物語がある。そういったものをまといながら、作り手が誇りを持ち、使い手が長く使いたいと思えるモノを作っていけば、確実に経済として成立すると考えている。

今はまだ社会実験中ではあるが、いつか良い結果をお届けできるよう、真摯(しんし)にモノ作りに向き合っていきたい。

バナー写真:ウガンダの首都・カンパラの中心部を行き交う人々=2024年11月15日(AFP=時事)

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