コラム:私の視点

「内閣の顔は私だけ」:改造の「地味さ」は自信の表れ

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高市早苗首相が9月17日の内閣改造に際し、「アンケート」を活用したことが注目された。

主に派閥の推薦や当選回数で決められてきた人事配置を、議員個人の希望や専門分野を重視する方式に改めるのは、従来の自民党には見られなかった大胆なアプローチだ。それゆえ永田町でも賛否が渦巻いている。結果として仕上がった人事を見渡すと、首相の「自信」がにじみ出たような内容となっている。

今回の閣僚人事について、政治を取材する多くの知人が「地味な人事」と口にする。高市内閣の支持率は、政権発足1年近く経過してもなお比較的高水準を維持している。過去の内閣のように、低落傾向の支持率をテコ入れするための「刷新感」を演出は必要ない。したがって顔ぶれの地味さこそ「自信」の現れと見ることができる。

前の石破茂政権では、コメの価格が高騰していた局面において江藤拓農林水産大臣(当時)の発言が問題視され、更迭に追い込まれた。その際、石破氏は小泉進次郎氏を後任の農水相に起用し、刷新感を打ち出そうとした。小泉氏は備蓄米の放出など思い切った政策手段を講じて連日コメ価格引き下げの先頭に立ち、内閣支持率はFNN・産経新聞調査で前月比5ポイント回復するなどの効果があった。参院選前の重要なタイミングだったため、石破氏としては人事を通じて支持率のテコ入れを図る必要があった。

だが、今の高市政権には同様のニーズはない。そのためか、若手のホープを大抜擢したり、女性閣僚を多数登用したりといった「見せる人事」をしていない。高市内閣の顔はどこまでいっても「私自身」という自信の現れでもあろう。

また、来年9月の自民党総裁選を見据えて、ライバルになり得る林芳正総務相を閣内に残さなかったことでも、自負が見て取れる。首相とは政策思想を異にする林氏が在野で自らの支持基盤を強化していけば、高市首相の無投票再選の可能性は低くなり、「高市VS.林」の構図が現実味を帯びてくる。それでも高市氏は十分に勝てると考えているようだ。

今回の改造では、いわゆる裏金問題(派閥パーティー券をめぐる政治資金収支報告書の不記載)の当事者であった議員が、問題発覚後初めて入閣した。政治とカネの問題は、2024年の衆院選で自民党が単独過半数割れし大敗を喫するに至った大きな不信の源だった。最近も福岡県議会で不祥事が相次ぐなど、自民党政権と政治とカネの問題は改めて注目されやすい素地がある。にもかかわらず、政策を推進するには選挙の洗礼を受けた議員を登用していくとの説明で乗り切れる、という強気の人選だ。

一方で、首相の説明とは必ずしも一致しない人選もあった。

首相は内閣改造後の記者会見で、組閣のポイントとして「選挙に強く、毎週のように選挙区に戻るのではなく、腰を据えて政策を着実に検討、実行していただけると思える方」を選んだと説明している。

だが、農相に起用された簗和生氏は、今年2月の衆院選での比例復活組だ。選挙区(栃木3区)では、無所属で立候補した自民党籍を有する新人の渡辺真太朗氏に敗れている。自民党が歴史的な大勝を収めた選挙での比例復活組は「選挙に強い」とは言い難い。党農林部会長の経験もあり、農政への知見はあるとしても、選挙区事情としてはむしろ「毎週のように選挙区に戻」り、地盤固めしなければならない状況にある。

農政は難しい局面にある。コメの供給過剰や価格下落への懸念が広がり、農家の経営をどう支えるかが問われている。また、米国産の生鮮ジャガイモの輸入解禁が検討されており、産地から病害虫の侵入を危ぶむ声が上がる。仮に解禁へ進むなら、農相はその必要性と安全性を説明する責任を負う。食料安全保障や国内農業の保護を重視する保守層から深刻な反発を呼び起こしかねない。

つまり、高市政権のコアな支持層との摩擦を招き得るテーマを所管するからこそ、農相には政策能力とともに、厳しい調整や説明に専念できる政治的な足腰が求められよう。

このように、閣僚人事は首相の自信が垣間見える一方で、首相自身がこだわりを持つ分野と、それ以外の分野で、人選の基準に濃淡やブレがあるのではないかという疑問は残る。

派閥などの党内基盤がない高市氏の政治的強みは、自身への世論の支持だ。総裁再選と長期政権への道筋も、その支持が続くことを前提にしなければ描けない。首相一人が内閣の「顔」であることは、強みであると同時に、閣僚の失敗を首相自身が引き受ける構造でもある。「地味な人事」に込めた自信が妥当だったか。その真価は、これから問われる。

バナー写真:第2次高市改造内閣が発足し、記者会見する高市早苗首相(ロイター)

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