麩(ふ): 低カロリー高たんぱくのスーパーフード
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室町時代(1336年〜1568年)(※1)、中国に留学して仏教を学んだ禅僧が、帰国する際に持ち帰った「メンチン」が原形と言われる。
小麦粉に水を加えて練った生地を、水の中でよくもんででんぷん質を洗い落とすと、ゴムのような弾力のある塊になる。これがメンチン。植物性のたんぱく質(=グルテン)で、肉食を禁じられた仏僧にとって貴重な栄養源だった。飽食の時代の現代人にとっては、低カロリー・高たんぱくのスーパーフード。食生活に上手に取り入れたい。
伝来当初は小麦は希少品だったため、寺社や宮中などで特別な時に食すものだった。庶民にも広がったのは江戸時代に入ってから。小麦の生産性が上がったことや、参勤交代、北前船などによって人やモノが行き来するようになったことが影響している。
麩の種類は「生麩」「焼き麩」「揚げ麩」の3つに大別できる。
【生麩】
グルテンにもち粉を加え、蒸したりゆでたりしたもので、もっちりとした食感が特徴。よもぎや粟(あわ)、ゴマなどを練り込み色や食感にバリエーションを付け、鍋物の具材や田楽などとして食す。
手まりや桜、紅葉などの形に細工したものは京懐石や加賀懐石など高級和食に彩りを添える。
【焼き麩】
グルテンに小麦粉を加えて焼いたもの。保存性が高く、ストック食材として便利。
最もポピュラーなのがみそ汁などの具材としておなじみの「小町麩」。バームクーヘンのように芯棒に巻き付けて回転させながら焼くのを繰り返して車輪のような形にした「車麩」、焼き上がった車麩を圧縮して板状にしたのが「板麩」。お椀をひっくり返したようなこんもり丸型の「まんじゅう麩」など種類豊富。
加える小麦の量によってずっしり重たい食感にも、フワッと軽くもなり、地方ごとに特色がある。
【揚げ麩】
グルテンに小麦粉を加えて油で揚げたもの。一見するとフランスパンのバゲットのよう。主に宮城県中北部~岩手県南部に分布し、代表格は「仙台麩」。宮城県登米市では、かつ丼の「かつ」の代わりに油麩を使った油麩丼をご当地グルメとして売り出している。ボリュームたっぷりだけど、カロリーは控え目。
【オマケ:意外な副産物】
「麩」を製造する際に分離した小麦粉のでんぷん質、実は以外なものに使われている。でんぷん質を1年半から2年かけて発酵させ、蒸しあげると餅のような食感に。これにきな粉と黒蜜をかけて食べる久寿餅は、関東地方でおなじみの和スイーツで、川崎大師の参拝土産としてよく知られている。
久寿餅が麩の副産物であることも、発酵食品であることもあまり知られていないが、知れば無性に食べたくなる!
種類豊富な「麩」と「麩を使った料理」をこちらにまとめました!
→ 「見るだけでも楽しい! お麩コレクション!」
バナー写真 : PIXTA
(※1) ^ 時期については諸説あり



