柿(かき):郷愁を誘う里山の秋の風物詩 干して凝縮された甘さは和菓子の原点
食 文化 暮らし- English
- 日本語
- 简体字
- 繁體字
- Français
- Español
- العربية
- Русский
日本の柿が海外で人気
柿の旬は10~11月で、東アジアが原産。縄文時代の遺跡から種が出土しているが、現代のものに近い品種は奈良時代に中国から渡来したと考えられている。当時の柿は、実が熟しても強い渋みが残る「渋柿」だった。
鎌倉時代に、樹上で成熟するうちに実の渋みが抜ける「甘柿」が誕生し、生食できるように。江戸時代には各地で柿の品種が銘柄化、日本からヨーロッパへ、後に米国にも渡った。日本語がそのまま学名に使われているため、学名はDiospyros kaki(「神の食べ物・柿」の意)。欧米ではkakiでほぼ通用する。日本の柿は海外でも評価が高く、輸出量は増加傾向にある。
甘柿なら「富有(ふゆう)」や「次郎」、渋柿なら種の無い「平核無(ひらたねなし)」などが人気で、生産量も多い。渋柿はそのままでは食べられないため、炭酸ガスやアルコールで「渋抜き」をする。スーパーなどの店頭にある柿は渋抜き後に出荷されており、どれを選んでも甘いので心配無用だ。
里山に自生するものもあれば、民家の庭先にもよく植えられている。晩秋、葉が落ちた枝の先で真っ赤に色づいた実は、どこか郷愁を誘う。
干し柿は先人の知恵
渋柿しかなかった時代、「干せば渋が抜ける」と発見した先人により、「干し柿」が作られるように。平安時代には祭礼用の菓子として用いられ、保存食としても重宝された。ちなみに表面の白い粉(柿霜=しそう)は結晶化した糖。茶人の千利休はこれを茶菓子として供したとされる。和菓子職人に伝わる「甘さは干し柿を最上とする」という教えが示す通り、干し柿は和菓子の糖度の基準であり、原点でもある。
「柿が赤くなると医者が青くなる」といわれるほど栄養価が高く、ビタミンCを豊富に含む葉は乾燥させてノンカフェインのお茶として活用される。また木材は建築に使われ、黒く変色した「黒柿」は希少価値があることから高級家具や茶道具などに用いられる。渋柿の果汁を発酵させた「柿渋」は染料や塗料になる。柿は日本の暮らしにしっかりと根付いている。
さまざまに活用できる柿を使った料理や干し柿の作り方をこちらにまとめました
→「ねっとり甘い干し柿は日本の伝統的な保存食 薬効のある葉も活用:柿のお料理コレクション」
取材・構成:イー・クラフト
バナー写真:富有柿(提供:岐阜県観光連盟)

