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ねっとり甘い干し柿は日本の伝統的な保存食 薬効のある葉も活用:柿のお料理コレクション

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柿を生食できるようになったのは近代以降。それゆえ伝統的な料理や菓子には干し柿が使われることが多い。全国で多くの品種が栽培されているので、各地の干し柿を食べ比べるのも一興だ。

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→「柿(かき):郷愁を誘う里山の秋の風物詩 干して凝縮された甘さは和菓子の原点

柿なます

縁起のいい「紅白なます」は、おせち料理や祝い膳の定番。ニンジンと大根で作ることが多いが、これに柿を加えたものが柿なます。干し柿を使う場合が多い。柿の甘みが、酢の酸味をほどよく和らげる。

佐賀県の干し柿なます(写真提供:農林水産省ウェブサイト)
佐賀県の干し柿なます(写真提供:農林水産省ウェブサイト)

柿ようかん

岐阜県など、柿の名産地で作られる和菓子。干し柿と砂糖、寒天を主な材料とすることが多い。地方により、白あんに干し柿を混ぜ込んで作ることも。

(PIXTA)
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干し柿

干し柿は日本の伝統的な保存食だ。渋さえ抜ければ甘柿より糖度が高くなるので、基本的には渋柿で作る。柿の皮をむき熱湯にくぐらせてから、軸をひもでつなぐなどして、雨の当たらない軒下に吊るす。1週間後、破らないよう注意しながら手でもむ。糖を含んだ水分を表面に出すため、その後もときどきもみ、1カ月ほど干したら出来上がり。

温度の低い環境で乾燥させることで糖が結晶化し、白く粉が吹いたようになる。干し柿生産量トップである長野県の特産品「市田柿」をはじめ、全国各地でよく見られるのはこのタイプ。

干し柿づくりの風景(写真提供:尾道観光協会)
干し柿づくりの風景(写真提供:尾道観光協会)

一方、福島の「あんぽ柿」など半生タイプの干し柿はカビが発生しやすいため、皮をむいた後に硫黄で燻蒸する。こうすることで、トロリとやわらかい食感に仕上がる。ちなみに、むいた皮は干しておき、漬物を作る際の甘みづけに使える。

あんぽ柿(写真提供:福島県観光物産交流協会)
あんぽ柿(写真提供:福島県観光物産交流協会)

干し柿&クリームチーズ

日本が誇るドライフルーツは意外にもクリームチーズと好相性。黒コショウをふれば、ワインにもよく合う。

(PIXTA)
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柿の葉寿司

葉を利用する番外編。柿の一大産地である奈良県・吉野地方の郷土料理。冷蔵技術の無い時代、近海で水揚げされたサバは塩を施され、奈良県に運ばれた。それを酢飯と一緒に柿の葉で巻き、押し寿司にしたのが始まり。タンニンを多く含む柿の葉は防腐作用があり、保存性を高めるのに有効だった。柿の葉の香りがほのかに寿司に移り、味わい深い。

(PIXTA)
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柿の葉にはビタミンCが豊富に含まれることから、蒸して乾燥させ、茶葉として用いる人もいる。捨てるところがなく用途の広い柿。ただ、ポリポリおいしい「柿の種」は形を模した米菓なので、お間違いのなきよう。

調査・構成:イー・クラフト

バナー写真:奈良県の柿なます(提供:農林水産省ウェブサイト)

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