知ればもっとおいしくなる にっぽん食べ物図鑑

豆腐:大豆ミートよりもはるか昔から「畑のお肉」と親しまれてきた良質のたんぱく源

文化 暮らし

豆腐は数ある大豆加工品のうち最もポピュラーで、シンプルなだけに応用が利く万能食材。高たんぱく・低カロリーなのも魅力だ。

すりつぶした大豆と水を加熱して搾ると、豆乳と搾りかす(おから)に分かれる。この豆乳に、凝固剤を加えて固めたものが豆腐だ。

発祥は中国で、いつどのように日本に渡ったかははっきりしない。文献に登場したのは平安末期の1183年、春日大社(奈良県)の供物録に「唐符(とうふ)」とあるのが最初とみられる。鎌倉時代に僧侶が精進料理に用い、室町時代に作り方が全国に伝播、江戸時代には庶民の食べ物として普及した。1782年刊行の『豆腐百珍』は、日頃食べている「尋常品」から最上級の「絶品」まで、6等級の分類で豆腐料理100種を掲載したレシピ本。「続編」「余禄」も刊行されるほどの爆発的なヒットとなった。100種もの料理が生まれるほど万能な、人気の食材だったと分かる。

『豆腐百珍』[正編](国立国会図書館所蔵)
『豆腐百珍』[正編](国立国会図書館所蔵)

豆腐の種類は「木綿」と「絹ごし」に大別できる。木綿は、熱い豆乳に「にがり」などの凝固剤を混ぜ、固まったところで一度形を崩し、こし布を敷いた型に入れる。型には穴が開いていて、上から重石をのせると水分が抜ける。押し固められることで形の崩れにくいしっかりした豆腐ができる。表面につく布目模様が名前の由来。

(PIXTA)
(PIXTA)

一方、絹ごしは加熱した豆乳を、凝固剤とともに型に流し入れ、そのまま固まるのを待つ。脱水の工程がないため、水分を多く含み柔らかい。絹の布でこしているわけではなく、木綿に対して、口当たりが絹のように滑らかなのでこう呼ばれる。

絹ごし豆腐(PIXTA)
絹ごし豆腐(PIXTA)

ちなみに「寄せ豆腐」「おぼろ豆腐」などと呼ばれるのは、木綿の製造工程で押し固める前の状態を指す。また、冷ました豆乳と凝固剤をプラスチック容器に注入・密閉してから加熱する「充填(じゅうてん)豆腐」は、食感は絹ごしに近く、長期保存が可能だ。

高たんぱく・低脂質・低カロリーと三拍子そろって健康志向の人やダイエット中の人にも人気。近年は、動物性の食材を食べないビーガンからも注目される。豆腐はいまや「TOFU」として海外にも市場を広げている。

さまざまな食べ方ができる豆腐の定番料理をこちらにまとめました
→「食べごたえずっしりでもヘルシー!和食材の代表選手:豆腐のお料理コレクション

取材・構成:イー・クラフト

バナー写真:木綿豆腐(PIXTA)

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