椎茸(シイタケ):日本で最も広く親しまれるキノコ―「生」は庶民の味、「干し」はちょっとぜいたく
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温暖湿潤な日本には多種多様なキノコが自生しているが、椎茸は栽培される菌類として長い歴史を持ち、最も広く親しまれているものの一つ。
胞子が付着しやすいように落葉広葉樹の丸太に鉈(なた)で切れ目を入れる栽培方法が江戸時代初期から行われていたが、1940年代に丸太に胞子のついた木片を打ち込む「原木栽培」が開発されて生産量が飛躍的にアップした。現在、生椎茸はおがくずを主体とする培地を使いハウスで通年安定して生産できる「菌床栽培」が主流となっている。
原木栽培は、山林に丸太を並べて天然ものに近い環境の中で育てる。収穫時期は春と秋。むっちりと肉厚で香り高いのが特徴。手間ひまがかかる分、菌床栽培に比べて高値で流通しているが、食べれば納得の満足感を与えてくれる。
世界のビーガンも注目する干し椎茸
生の椎茸を乾燥させた干し椎茸は、真言宗の開祖である空海(774~835年)が唐に留学した際に持ち帰った食習慣と伝えられる。干してうま味が増すうえに、保存性が高いことから、肉食が禁じられた仏道では貴重な食材だったのだろう。
生椎茸は菌床栽培が主流であるのに対し、干し椎茸は原木栽培が中心。かさが完全に開いてから干した平たいものを「香信(こうしん)」、七分開きで丸みを帯びた状態のものを「冬菇(どんこ)」と呼ぶ。冬菇の中でも、かさに花のような亀裂の入った「花冬菇」は高級食材として珍重される。
干し椎茸はイノシン酸・グルタミン酸と並ぶ「三大うま味成分」であるグアニル酸を豊富に含む。水で時間をかけてゆっくりと戻すと、むっちりとした厚みがよみがえり、生椎茸とは異なる独特の食感になる。戻し汁にもうま味成分がたっぷり含まれるので、煮物などの出汁(だし)として活用する。昆布やかつお節との合わせ出汁にするとうま味の相乗効果でさらに奥深い味わいに。
主要産地である大分県では2010年代から欧米への輸出に力を入れている。肉厚で濃厚なうま味成分を含む日本産の干し椎茸は、食べ応えと満足感を与えてくれる食材としてビーガンやベジタリアンから注目されている。
煮ても焼いてもおいしい椎茸のお料理を集めました
→「生」も「干し」もうま味たっぷり:椎茸のお料理コレクション」
取材・構成:イー・クラフト
バナー写真:原木栽培の様子(写真提供:大分県椎茸振興協議会)


