知ればもっとおいしくなる にっぽん食べ物図鑑

温州みかん:中国の地名を冠した日本生まれの柑橘─世界ではサツマ・オレンジ

文化 暮らし

手で皮をむきやすく、甘くて、種もなく食べやすい―温州みかんは手軽な価格で楽しめる日本を代表する果物。

温州ではなく「薩摩」生まれ

「蜜柑=みかん」は、皮をむきやすく、蜜のように甘い小型の柑橘(かんきつ)の総称だが、圧倒的に収穫量の多い「温州(うんしゅう)みかん」を指す言葉として使われている。

温州みかんは400年ほど前に中国から渡来した柑橘が元となり、薩摩藩(鹿児島県)長島で偶然に生まれた品種。柑橘類の産地として名高い中国・浙江(せっこう)省の温州とは直接の関係はないが、「温州のみかんのようにおいしい」というのが命名の由来だという。学名はCitrus unshiu (シトラス ウンシュウ)。

温州みかんは、世界的には「サツマ オレンジ」として知られる(「マンダリン」としても流通)。明治期に日本に駐在した米国公使が薩摩産の苗木をフロリダに送ったことから名付けられたようだ。日本では忘れられた原産地の名前が、海外の通称として残っているのが面白い。手でむきやすく甘くておいしいと英国や米国でも人気という。

(写真提供:和歌山県観光連盟)
(写真提供:和歌山県観光連盟)

江戸時代は小粒で種の多い紀州みかんが主流で、家名の存続が重んじられていたため“種なし”の温州みかんはあまり好まれなかった。明治時代に入ると、種なし故の食べやすさや手ごろなサイズ感が人気となり、温暖な地域で生産が盛んになった。現代では和歌山県、静岡県、愛媛県が三大産地。それぞれ「有田」「三ヶ日」「宇和島」と産地名を冠したブランドが有名。これら3県で全国の温州みかん収穫量の5割超を占める。

(写真提供:和歌山県観光連盟)
(写真提供:和歌山県観光連盟)

市場には9月ごろから、やや青みがかった極早生(ごくわせ)品種が出回り始める。最盛期は10~12月。

ビタミンCが豊富で、3個で1日の必要量をほぼカバーできるため、風邪予防に効果的。房に付いている白い筋も食物繊維やビタミンを豊富に含むが、舌触りが気になる人は、ヘタ側から皮をむくと取り除きやすい。

みかん大福

大福にいちごを1粒丸ごと入れた「いちご大福」が登場したのは、昭和の終わりごろ。その後、みかんなどさまざまな果物を使ったフルーツ大福が生まれた。断面の美しさがSNS映えすることから、令和になりブームが再燃した。

(PIXTA)
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フルーツサンド

こちらも色鮮やかな断面が「映える」と若者を中心に人気。果物を生クリームとともにパンに挟んだ、軽食ともスイーツともとれるサンドイッチは日本発祥といわれ、近年はインバウンドに人気が高い。

(PIXTA)
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七味唐辛子

番外編。干したみかんの皮は「陳皮」と呼ばれ漢方にも用いられる。日本独自のミックススパイス「七味唐辛子」の定番アイテム。清涼感のある香りとほろ苦さが、料理にアクセントを添える。

(PIXTA)
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取材・構成:イー・クラフト

バナー写真:PIXTA

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