知ればもっとおいしくなる にっぽん食べ物図鑑

つくだ煮:こげ茶色の照りは濃厚なうまみの証─江戸前の漁師の保存食が全国へ

文化 暮らし

「もったいない精神」から生まれた漁師の保存食・つくだ煮。いまや全国津々浦々、さまざまな食材で作られている。結論、「しょうゆと砂糖で煮れば何でもおいしい」?!

つくだ煮は主に海藻や貝、魚といった海産物、あるいは農産物を、しょうゆと砂糖などで甘辛く煮付けた保存食。

名前の由来は、かつて「佃(つくだ)島」といわれた東京都中央区佃が発祥のため。佃島は、徳川家康が江戸幕府を開く際、ゆかりのあった摂津国西成郡佃村(現在の大阪市西淀川区佃)から呼び寄せた漁師33人が、隅田川河口の干潟を埋め立ててできた人工の島。

歌川広重『江戸名所』永代橋佃島 藤慶(国立国会図書館所蔵)
歌川広重『江戸名所』永代橋佃島 藤慶(国立国会図書館所蔵)

漁業の中心地となったこの島で、余った食材を長期保存するため漁民が作っていたのが佃煮のはじまり。当初は塩味だったが、紀州(和歌山県)から伝わったしょうゆを使い、濃い味付けにしたことで保存性がさらに向上した。

参勤交代を終えた武士が江戸土産として持ち帰ったつくだ煮をまねて、各地で特産物を使ったつくだ煮づくりが盛んになった。いまや数えきれないほどの種類が全国に存在する。日常的に食べる数百円程度のものから、百貨店で扱う高級品まで価格のバリエーションも広い。砂糖や水あめで甘さを強めに仕上げた「甘露煮」、ショウガなどで辛みを加えた「しぐれ煮」なども広義でつくだ煮の仲間といえる。

味が濃いため、主にご飯のお供として食べられる。おにぎりやお茶漬けの具にすることも多い。以下、おなじみのつくだ煮を紹介。

昆布

おにぎりの具として定番中の定番。しばしば弁当の隅に添えられている。シイタケ昆布、サンショウ昆布、ゴマ昆布、たらこ昆布など、別の食材と組み合わせることも多い。

シイタケ昆布(PIXTA)
シイタケ昆布(PIXTA)

海苔(ノリ)

江戸の特産品だった海藻を甘く煮付けた。パリッとした板海苔とは違う味わいで、広く親しまれる。

(フォトAC)
(フォトAC)

貝類

アサリやシジミ、ハマグリなどが代表的。濃厚なうまみを楽しめる。

東京都「アサリのつくだ煮」(写真提供:農林水産省「うちの郷土料理」)
東京都「アサリのつくだ煮」(写真提供:農林水産省「うちの郷土料理」)

アミ・小エビ

アミや小エビなど、小型の甲殻類もしばしばつくだ煮にする。カルシウムがたっぷり。

アミのつくだ煮(PIXTA)
アミのつくだ煮(PIXTA)

魚類

シラウオ、ハゼ、ワカサギなど、小魚をそのまま使うことが多い。ニシンやサンマなど中型の魚は、食べやすく処理してから煮付ける。

山梨県「ワカサギの甘露煮」(写真提供:農林水産省「にっぽん伝統食図鑑」)
山梨県「ワカサギの甘露煮」(写真提供:農林水産省「にっぽん伝統食図鑑」)

イカナゴの稚魚のつくだ煮は、折れ曲がった形がくぎに似ていることから「くぎ煮」と呼ばれる。関東ではイカナゴを小女子(コウナゴ)と呼び、クルミの歯ごたえが絶妙にマッチした「小女子クルミ」は子どもにも人気。

左:兵庫県「イカナゴくぎ煮」(写真提供:農林水産省「うちの郷土料理」)、右:小女子クルミ(PIXTA)
左:兵庫県「イカナゴくぎ煮」(写真提供:農林水産省「うちの郷土料理」)、右:小女子クルミ(PIXTA)

山菜

フキのつくだ煮を「きゃらぶき」と呼ぶ。葉トウガラシやシソ、サンショウの実など山の幸もつくだ煮の材料になる。

きゃらぶき(フォトAC)
きゃらぶき(フォトAC)

サンショウのつくだ煮(PIXTA)
サンショウのつくだ煮(PIXTA)

昆虫

稲を食べるイナゴは害虫である半面、貧しい時代の貴重なたんぱく源だった。独特の食感と香ばしいうま味は、ご飯のお供にも酒の肴(さかな)にもなる。今でも、長野県南部の伊那地方では、イナゴに加えてクロスズメバチなどの幼虫「蜂の子」など、昆虫食の伝統が根付いている。

イナゴのつくだ煮(PIXTA)
イナゴのつくだ煮(PIXTA)

蜂の子のつくだ煮(フォトAC)
蜂の子のつくだ煮(フォトAC)

取材・構成:イー・クラフト

バナー写真:コンブつくだ煮(PIXTA)

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