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しらす:栄養たっぷりのイワシの稚魚─大衆魚だけど繊細な味わい、透き通る“生” は鮮度が命

文化 暮らし

海の栄養を丸ごと取れる、しらす。同じイワシの子なのに、水分量の違いにより呼び名が変わる。

しらすは、主にカタクチイワシやマイワシなどイワシ類の、生後1~2カ月ほどの稚魚を指す。体に色素がなく、ゆでると白くなるため、しらすと呼ばれる。江戸時代から地引網で漁獲されていた。相模湾(神奈川県)、駿河湾(静岡県)、瀬戸内海などが特産地として名高い。

相模湾に浮かぶしらす漁船(写真提供:神奈川県逗子市)
相模湾に浮かぶしらす漁船(写真提供:神奈川県逗子市)

生のしらすは鮮度が落ちやすいため、水揚げ後は大部分が加工に回される。生しらすを大釜でゆでたものが「釜揚げしらす」。水分量が80%程度で、ふっくら、しっとりしている。

生しらす(写真提供:静岡県観光協会)
生しらす(写真提供:静岡県観光協会)

釜揚げしらす(写真提供:静岡県観光協会)
釜揚げしらす(写真提供:静岡県観光協会)

釜揚げしらすを天日干しまたは機械乾燥し、水分量が60~70%程度になった状態を「しらす干し」と呼ぶ。さらに乾燥させ、水分量30~50%程度のものが「ちりめんじゃこ」。しらすを平らに干した様子が細かなしわを持つ絹織物のちりめんと似ており、「雑魚(じゃこ)」が小さい魚を指すことから、この名が付いた。「ちりめん」または「じゃこ」と略して呼ぶことも。水分量が少ないほど保存がきき広く流通できるため、しらす干しやちりめんじゃこは比較的庶民派といえる。

ちりめんじゃこ(PIXTA)
ちりめんじゃこ(PIXTA)

1960年代頃の漁場。ゆでたしらすを浜で広げる(写真提供:神奈川県逗子市)
1960年代頃の漁場。ゆでたしらすを浜で広げる(写真提供:神奈川県逗子市)

しらすは養殖できないため、すべて天然物。資源保護のため、冬の数カ月間を禁漁期間とする地域が多い。小ぶりでふわっとした春しらす、水温が下がり脂の乗った秋しらすは、特においしい。

しらす丼

ご飯の上にしらすをたっぷりのせ、おろしショウガや刻みネギなどを添えた丼物。生しらすは鮮度が命。水揚げ地の近くで味わいたい。家庭では釜揚げしらすか、しらす干しを使うことが多い。

生しらす丼(写真提供:静岡県観光協会)
生しらす丼(写真提供:静岡県観光協会)

しらすおろし

大根おろしにしらすをのせ、しょうゆを垂らした小鉢。さっぱり箸休めに。

(フォトAC)
(フォトAC)

じゃことピーマンの炒め

パラパラのちりめんじゃこは、炒め料理に向く。ピーマンと炒めた「じゃこピー」は、定番の炒め物。小松菜や野沢菜などと一緒に炒めることも。

じゃことピーマンの炒め(フォトAC)
じゃことピーマンの炒め(フォトAC)

梅しらす / 梅ちりめん

刻んだ梅干しとしらすの組み合わせは、ご飯にぴったり。ふりかけや、混ぜ込んだおにぎりも定番。

左:梅しらすをのせたご飯、右:混ぜご飯のおにぎり(いずれもフォトAC)
左:梅しらすをのせたご飯、右:混ぜご飯のおにぎり(いずれもフォトAC)

ちりめん山椒

ちりめんじゃこと山椒(さんしょう)の実をしょうゆなどで甘辛く煮た、京都発祥のご飯のお供。

京都府のちりめん山椒(写真提供:農林水産省「うちの郷土料理」)
京都府のちりめん山椒(写真提供:農林水産省「うちの郷土料理」)

畳いわし

生のしらすを薄く広げ、板状に干す方法。軽くあぶって酒のつまみや、カルシウム豊富なおやつとして好まれている。昔はイグサの畳表の上で干していたことが名前の由来。

あぶるとパリパリになり、そのままでもおいしい(Adobe Stock)
あぶるとパリパリになり、そのままでもおいしい(Adobe Stock)

しらすピザ

ピザにしらす……日本人の勝手な和風アレンジかと思いきや、イタリアでは「チチニエッリ」といい、ナポリ名物なのだとか。パスタのトッピングとしても人気のしらす、イタリア料理と好相性のようだ。

しらすをのせたピザ「チチニエッリ」(フォトAC)
しらすをのせたピザ「チチニエッリ」(フォトAC)

【資料】

  • 神奈川県漁業協同組合連合会「シラス

取材・構成:イー・クラフト

バナー写真:しらす干し(PIXTA)

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