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菜の花:咲く直前を摘み取って食卓へ─春を運ぶ、栄養満点の花野菜

文化 暮らし

年中流通する野菜と異なり、今しか手に入らない春の味。つぼみの生命力を丸ごといただこう。

菜の花という野菜は存在しない!?

菜の花は、柔らかいつぼみを食べる花野菜の代表格。ハウス栽培などで通年で食べられる野菜も多いが、菜の花は年末から3月頃までの期間限定で出回るので、まさに、食卓に春を運んでくれる存在。

実は「菜の花」という野菜は存在しない。そもそも、この時期、公園や河原を一面黄色く彩る「菜の花」も植物の名前ではない。「菜の花」は文字どおり「菜っ葉の花」を指す言葉で、アブラナ科の植物の花の総称。アブラナ科の野菜はハクサイ、ダイコン、カブ、キャベツ、コマツナ、ブロッコリー、チンゲンサイ、ミズナ、ルッコラなど挙げていくとキリがない。これらの花はみんな「菜の花」だが、通常は花芽が出る前に収穫するので、ハクサイやコマツナの花が「菜の花」として流通することはない。

和種のアブラナは、弥生時代に大陸から渡来したとされる。「油菜」というだけあって種子から油が取れるため、菜種油の採取を目的として江戸時代から広く栽培されるようになった。現在の主流は明治中期になって、西洋から入ってきたセイヨウカラシナとセイヨウアブラナで、セイヨウアブラナは菜種油を取るため、セイヨウカラシナは食用のために栽培が盛んになり、それが川の土手などに自然に広がり、近年は観光資源としても活用されている。 

菜の花畑(写真提供:千葉県観光物産協会)
菜の花畑(写真提供:千葉県観光物産協会)

鑑賞用も食用も元は同じ品種だが、食用は苦みやあくを低減し、茎まで柔らかく食べられるように品種改良を重ねている。食用菜の花の、国内最大の産地は千葉県で、収穫量全体の5割程度を担う。ちなみに菜の花は千葉の“県花”だ。

これから花を咲かせようというタイミングで摘み取るため栄養価が高く、特にビタミンCは野菜の中でもトップクラス。鉄分などミネラルも豊富に含む。

収穫期の菜の花(写真提供:南房総市)
収穫期の菜の花(写真提供:南房総市)

長さを切りそろえ、つぼみが開かないうちに出荷する(フォトAC)
長さを切りそろえ、つぼみが開かないうちに出荷する(フォトAC)

菜の花を使った料理は、ほろ苦い味わいを生かしたシンプルなものが多い。

おひたし

さっとゆでてから、しょうゆなどで調味した、だしに浸す。軽く絞ってかつお節を添えれば春らしい小鉢に。

(フォトAC)
(フォトAC)

からしあえ

ゆでた菜の花の水気を絞り、練りがらしを加えたしょうゆだしであえる。ピリッとした辛みとほろ苦さが、大人の味。

(フォトAC)
(フォトAC)

天ぷら

衣をつけて短時間揚げた菜の花は、ぱらりと塩を振るだけでごちそう。

(PIXTA)
(PIXTA)

吸い物

女児の健やかな成長を願う3月3日の桃の節句(ひな祭り)には、夫婦円満、伴侶と末永く添い遂げることを象徴するハマグリの吸い物を食べるのがならわし。同じ頃に旬を迎える菜の花を椀に加え、彩りを添える。

(PIXTA)
(PIXTA)

パスタ

菜の花の原産地は地中海沿岸ともいわれる。イタリアでは「カブの頭(チーマ・ディ・ラーパ)」と呼ばれる菜の花を、やはり春の味覚として楽しむそう。日本のイタリア料理店でも、春先になると菜の花を使ったパスタがメニューに登場する。

(フォトAC)
(フォトAC)

取材・構成:イー・クラフト

バナー写真:フォトAC

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